米バッドバンク構想 金融界は引き気味

米国流バッドバンクの成否のカギ

 米国流のバッドバンク=不良資産買取プログラム=官民投資プログラム(PPIP)がうまく行くかどうかは、銀行が不良資産を処分するか否かにかかっていることは09年3月2日付ブログに書いたとおりだ。米連邦預金保険公社FDICからのノンリコースローンが得られ、出資額も買い取り額の14分の1で、もうけたときは政府と山分けというのだから、不良資産も相場価格以上で買い取ってもらえる。しかし、銀行からすればこれは毒饅頭となるかもしれない。買い取り価格がいくら高くても、額面を割ることは確実だから、バランスシートは悪くなり、資本注入を受けざるを得なくなってくる可能性がある。そうした場合経営者責任も問われるかもしれず、資本注入の結果国有化されれば株主の持ち分も減ってくる。銀行本体にとってはいい制度であったとしても、経営者、株主にとってはメリットがない。

米銀行CEOの反応

 3月27日、米大手金融各社のCEOは、オバマ大統領と会談し、不良資産買い取り計画を支持する意向を表明した、とロイターは報じた。いわく、会合後、記者団を前に、ウェルズ・ファーゴのCEOは「基本メッセージは、われわれは共にこの計画に臨むということだ」と言い、バンカメのCEOはPPIPに参加する考えを示し、価格に関する詳細を待っていると述べたという。モルガン・スタンレーのCEOも、計画に参加するかと聞かれ「もちろんそう希望する」と語った、という。
 しかし29日付日経には違ったニュアンスの記事が掲載されている。記事をそのまま引用する。
 大統領との会談を終えた金融界のCEO達の反応も複雑だった。「会談は協調的だったが、すべてで一致した訳ではない」(バンカメCEO)。シティグループCEOは「政府の支援はすべて検討する」としたものの記者の質問を遮り、いち早く会見の場を後にした。

銀行CEO、サマーズの乗りについて行けず

 実は銀行CEOは、大統領と会う前日金融業界の会合があり、それでワシントンに来ていたのである。そしてその会合に突然国家経済会議議長のローレンス・サマーズが現れ、「国家が何をしてくれるかではなく、国家のために何ができるか」と、ケネディ大統領の演説を引用して一席ぶったのだという。サマーズとしては翌日の大統領との会談を控えての地ならしだったのだろうが、出席者は「重要性は分かるが、気分はしらけている」と言っていたという。
 ところでサマーズは最近はかなり丸くなったという話だ。かつては議会での説明でも、自分の能力をひけらかし、相手がベテラン議員であろうと濡れた落ち葉を踏みつけるように論破したという彼だが、最近は「間違っているかもしれないが」と断ってから意見を言うなど、議会でも議員の発言に謙虚に耳を傾けているという。傲岸不遜のイメージのサマーズが「国家のために、、」などとボーイスカウトのリーダーみたいなことを言ったものだから、気味が悪かったのかもしれない。