中国 ドル基軸通貨体制にNO

中国SDR活用を提言

 米国債の最大保有国である中国の温家宝首相は、09年3月13日、「米国は基軸通貨の発行国として、その通貨は適切に管理すべきだ」と表明している。これは、米国FRBが中長期国債の巨額購入計画がドル暴落=米国債暴落を懸念してのことだ。
 中国人民銀行の周小川総裁はドル基軸体制の限界を指摘する論文を発表し、ドルに代わる新たな国際通貨を創設するよう呼び掛けていたが、24日、IMFのSDRに中心的役割を与える考えを示した。
 なお人民銀の胡暁煉副総裁は中国のIMFの資金支援について、出資比率見直しによる同国の発言権向上が原則との考えを示している。これはIMFが出資金割合により発言権が決まり、かつ15%が反対すれば重要決定をできないとするIMFの規定の下、米国単独で15%超出資しているため、米国のみが単独拒否権を持っていることに対する批判でもある。

中国の狙い

 日本のポチ政府は米国に対してはYESしか言えないが、中国は平気でNOを言う。今回の中国のNOは、ネトウヨも心中では中国もやるじゃないかと考えているのではないか。
 ドルショック以降、SDRは通貨バスケットとして定義されており、バスケットはユーロ、日本円、英ポンド、米ドルで構成されている。米ドルで表示したSDR価格は、ロンドン市場における正午の為替相場をもとに、4通貨の特定金額を米ドルに換算したものの合計として毎日計算されている。
 SDRはIMF基金からの特別引出権であるが、この引出権を活用することを考えているのではなく、通貨バスケットとしての活用を考えているのではないか。
 バスケットの構成通貨の割合は、5年ごとに見直され、次回の見直しは2010年末に予定されており、中国はここに人民元を押し込もうとしているのではないだろうか。
 カーター政権時代にボンド建で米国債が記載されたことがあるが(カーターボンド)、SDR建で米国債を買うというのだろうか(米ドルで決済するにしてもSDRで決められた償還額を支払う)。

米国の反応

 米国の反応は当然NOだ。米国経済再生諮問会議議長のボルカー元FRB議長は3月25日、SDRを新たな基軸通貨とする国際通貨体制への移行に関する中国に提案について、現実的でないとの見方を示した。ドルの役割をめぐる議論の存在は認めながら「ドルを捨て、新しい国際通貨システムを追求するのは、現実的ではない。そのような事態は現行システムが崩壊した場合にのみ起こり得るが、誰もそれは望んでいない」と述べた。ボルカーは「(中国は)そもそもドルを買う必要はなかったのだから、自ら問題を助長したという事実を無視している」とも指摘。要するに「お前ら、元安のほうが輸出に有利だっていうんで、米ドル=米国債をバカバカ買ってただけの話じゃない。別にお願いして買ってもらってた訳じゃないよ。要は自業自得じゃん。」という話だ。
 でも本当にそう言いきってしまって良いのだろうか。
 http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-37168420090325

追記 その後の中国(09.8.22)

 その後中国の主張に沿う形で、IMFは7月1日の理事会で、SDR建ての債券を発行すると正式に決めた。最長で5年債になる見通しで、IMF加盟国・中央銀行間で転売できる。これを受け中国、ブラジル、ロシアが近く同債券を最大700億ドル購入する見込み。IMFの債券発行は設立以来、60年を超す歴史で初めてだが、ドル建てではなく、SDR建というところが、重要な点である。
 中国は、こうしてドルを基軸通貨から追い落とすかのように見えながら、これと反対のことを述べることもある。中国外務省の何亜非次官は、7月5日にローマで、「ドルは世界で最も重要な準備通貨であり、当面そうあり続ける。それが現実だ」と強調。中国人民銀行の周小川総裁が今年3月に示した国際通貨基金のSDRを基軸通貨に育てる構想はあくまで私的な構想にすぎないとした。
 ロシアは、ドルを基軸通貨から排除しようという意味でタカ派一辺倒だが、政治力に長けた中国は時にはタカを演じたり、時にはハトを演じたりする。覇権国家中国としては目の上のたんこぶの米国が没落してくれればいいが、かといって今米国債が没落されては困るのだ。