東京地検特捜部 小沢一郎事情聴取見送る 

新聞報道から

 西松建設からの献金問題で、東京地検小沢一郎の事情聴取を見送る方向のようだ(日本経済新聞09年3月20日朝刊)。

政治資金規正法違反での立件は困難

 西松建設がダミーの政治団体を使って献金した先の一つが、小沢が代表者を務める、資金管理団体「睦山会」だ。しかし公設第一秘書はともかく、小沢を政治資金法で起訴するのは至難の業だ。政治資金規正法25条は「政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、50万円以下の罰金に処する。」とある。「選任または監督」ではなく、「選任及び監督」という点が重要だ。選任上の過失となると、「企業献金を受け取るような可能性のある人間を選任してしまった」過失ということになる。このような過失はありえない。あくまでも小沢個人が直接献金の実態を掴んでいるといった事実が必要になる。

収賄罪の立件はさらに困難

 国会議員を収賄罪で立件するのは非常に難しい。たとえば警察官が被疑者から金を受け取ったとか、県の入札担当者が建設業者から金を受け取ったというのであれば、金銭の授受が当該公務員の職務行為のために行われたことが明確に見て取れる。しかし、国会議員の職務というのが、国政全般に及ぶため、贈賄者の立場と職務行為との関連性を結びつけるのが非常に難しい。国民のだれもが政治上の利害関係を持っている以上、国民の誰かが国会議員に資金を提供したら全て贈賄行為になると解釈するわけにはいかないだろう。
 国会議員が収賄となるのは、贈賄者の利益を図るため、具体的に行動したような事実が必要だ。しかしそういった立証は極めて困難なのである。

裁判員制度が動機

 今回の小沢の公設第一秘書の逮捕が、総選挙直前に行われたということで、検察の政治的動機をうかがう声が多い。逮捕直後は、自民党と通じて行われたのではと見方が強かったが、検察のヒートアップを見てむしろ別のところに理由があるのではないかと最近指摘され始めている。それは裁判員制度を守るためではないかというのだ。
 裁判員制度は、今年5月21日から実施される。この裁判員制度、市民が裁判に加わるという意味で非常に民主的でいい制度のように見えるが、重大事件が安直な手続きで行われかねない危険性を秘めている。裁判員制度は、国民の方に気楽に裁判員になってもらえるよう、素人でも分かりやすい手続きにしなければならないし、裁判官に過度の負担を与えないように、裁判所に提出される証拠も厳選されなければならない、という制度設計になっている。このため無罪事件について、まともな裁判をしてもらえるのかという疑問が主に弁護士側から提起されている。短時間で最小限の資料で裁判しようということになると、警察の証拠の矛盾等を理解してもらうのは難しい。
 また厳罰化するのではないかということも心配されている。特に死刑反対派は、殺人罪において死刑判決が急増するのではないかと危惧している。
 もっともこのように言って、裁判員制度を批判するのは日弁連の中の反体制派だ。反体制派からすると、日弁連は執行部の裁判員制度導入を自分たちの手柄としたいがために、裁判員制度の負の部分に敢えて目を塞ぎ、法務省主導の裁判員制度に盲従していると考えているのだ。
 そして、小沢はこの裁判員制度に批判的で、裁判員制度実施を延期すべきだとの意見を持っている。樋渡現検事総長は、司法制度改革審議会では事務局長を務め、裁判員制度の導入役としてよく知られた人物である。自分の労作をつぶそうとしている小沢一郎に反感を持っているのではといううがった見方もある。
♪小沢さんには合わない歌ですが。一日の終わりにはいい歌、かと。小沢さんもこの歌を聞いて心を落ち着けて眠ってください。
Christpher CrossのSailing です。
http://www.youtube.com/watch?v=UQeqmNbA2Hs