ルネサステクノロジ 500億円増資

ルネサステクノロジ

 ルネサスは03年4月に、日立と三菱電機半導体事業を分社化させ、これを統合してできた会社である。発足以来DRAM(ディーラム)事業に特化してきた。DRAMはデータを一時的に保存するメモリ半導体だ。PC、サーバ、モバイル機器、デジタル家電等に使われているが、世界のDRAMの4分の3がPC向けに生産されている。
 こうしたことより、北京五輪で優勝したソフトボール日本代表のエース上野由岐子が所属するルネサス高崎のオーナー企業といった方が、いいかもしれない。

DRAMの価格の下落

 半導体業界は5、6年周期で不況、好況を繰り返してきた業界である。しかし今回の半導体不況は過去に例がないほど長期化している。PC向けDRAM価格は、06年度のピークでは6ドル以上で推移していた512MビットDDR2 SDRAMのスポット価格が、07年度後半には1ドルを切り、その後も価格の下落が続いた。09年1月、ドイツの大手半導体メーカーキマンダが、破産手続きを申請したため、半導体価格がようやく反発したが、09年度も半導体市場は2割超の減少が予測されており、価格の上昇にも限界があるだろう。
 米調査会社ガートナーは世界の半導体売上高が09年に前年比24%減の1945億ドルになると予測。10年からは増加に転じるが、12年時点でも07年のピーク(2700億ドル)には届かず、生産設備の余剰感が長期に渡って続く懸念がある。(日経09.3.13朝刊)
 この価格下落の最大の要因は、Windows Vistaの発売に伴い、DRAM需要が大幅に拡大すると見込んだメーカー各社が、06年から07年にかけて大規模な設備投資を行ったことだ。VISTAが発売されてみると、使えない代物だと判明し、PC生産量は振るわず、おまけに景気も減速。DRAMは完全な供給過剰になった。

ルネサスの今後

 ルネサスは08年度(09年3月期)の売上高を6800億円(前年度比72%)、営業損失を1100億円と、大幅な減収減益を見込んでいる。日立が電機業界最大の7000億円の純損失を出したのも、連結子会社たるルネサス日立建機の経営不振がその大きな原因となっている。
 ルネサス自己資本も悪化し、銀行からの融資が難しくなっているため、増資することになった。ルネサスの現在の資本金は500億円で、日立が55%、三菱電機が45%の株を保有しているが、今回500億円増資し、資本金を倍にするという。そしてさらに(PC向けではなく)自動車や家電製品の制御に使うマイコン事業に経営資源を集中していく予定だという。

追加 パワー半導体

 国内メーカは家電や環境車の電力消費量を減らせる「パワー半導体」を増産する。パワー半導体とは、交流と直流の返還や、周波数・電圧の調整等機能を担う。現在はシリコンを素材に使うタイプが主流だが、電気自動車や発電所などの高い電圧に対応するため、新素材を使った商品の開発と実用化の競争が高まっている。しかしシステムLSI等で苦戦する日本企業も、パワー半導体では海外大手と互角の競争力を持つ。米調査会社アイサプライによると、パワー半導体の世界出荷量は13年には09年比40%増の1兆1655億円になる見通しと言う。半導体出荷額に占める割合は現在は3%台だが、数年後には5%程度になるという。現在は東芝三菱電機のほか欧州の2社が各10%程度のシェアで首位を争っている。(09.9.26日経)