カーネル・サンダース 道頓堀川から引き上げられる         優勝への使いか

カーネル・サンダース人形の呪い

85年10月16日、阪神ヤクルト戦は、延長10回で時間切れ引き分け。阪神が21年ぶりにリーグ優勝を飾った。六甲下ろしの熱唱が神宮を包んでいたころ、大阪のタイガースファンがKFC道頓堀店に押し寄せ、カーネル・サンダース人形を持ち去った。熱狂的なファンの目には、口元に笑みを浮かべたカーネルサンダースランディ・バースのように映ったらしい。カーネル・サンダース人形は、「バース!バース!」の掛け声の中、胴上げされ、何度となく宙に待った。そして胴上げのあとカーネル・サンダースは、戎橋から、道頓堀川に投げ込まれたのだ。
 優勝後は虎から猫に早変わりするのが阪神の宿命。その後は不振のシーズンが続いた。そして、いつしか阪神ファンは、これは道頓堀川に投げ込まれたカーネル・サンダースの呪いだと信じるようになった。阪神を優勝させるためには、カーネル・サンダース道頓堀川から引き上げて、成仏させなければならない。そのため、ダイバーがあの汚い道頓堀川に潜ったが、道頓堀川のそこに1mの厚さで積もったヘドロに阻まれ、結局見つからなかった。

カーネル・サンダースの下半身見つかる

 ところが、道頓堀川の護岸工事中、09年3月10日夕にカーネル・サンダースの上半身が、11日には下半身と右手も見つかったのである。これで、カーネル・サンダースも成仏することができるのか。一説によるとまだ眼鏡が見つかっていないため、成仏できないのではとの声もある。この辺りは江原さんの意見を聞きたいところだ。
 とにかく、阪神ファンは大喜び。NHKも全国ニュースでこのニュースを報じた。街角でインタビューされた若者は嬉しそうに言った。「真弓新監督に、優勝をプレゼントしに現れたんとちゃいますか」

阪神通天閣が争奪戦

 このカーネル・サンダース人形を、阪神通天閣が争奪戦を繰り広げている。阪神南信男球団社長が「甲子園にいい置き場所がある」「バースを呼んで除幕式をやりたい」と熱く語れば、通天閣の西上雅章社長も「通天閣の展望台で安置させたい」「甲子園に置くと年間65試合くらいしか見ることできないでしょう」「うちなら365日、いつでも見られます。」と一歩も譲らない。阪神通天閣は、食い倒れ太郎のときも、争奪戦を展開。結局くいだおれ側が売却を取りやめ決着したが。この大阪夏の陣のあとの冬の陣。阪神優勢が伝えられると、通天閣社長も「またかいな、太郎のときと一緒やな。下半身だけでももらえんやろか。阪神(半身)やから」と泣きが入る(本日付東スポ)。
 おいおい、待てよ!カーネル・サンダース人形はKFCのものだろう。しかし余りの両者のヒートアップに、KFCも、自分の権利を主張せず、どちらに引き渡すか決めかねている様子だ。

大岡裁きでどう?

 阪神通天閣。ここは大岡裁きで決めようではないか。バースが中に立ち、一言。「各々言い分仔細に承知つかまった。が、評定つかぬゆえ、お主らカーネルサンダース人形を引っ張り合って、奪いとるがよい。熱心な方が力も出よう。買った方が真の所有者。さぁさぁ」。そうして、南社長と、西上社長の一騎打ち。両者に引っ張られ、カーネルサンダースの人形の腕が外れんとするその瞬間、一方が手を離す。それを見たバースが一声を上げる。「あいや待たれぃ!既に勝負あった。」そして手を離した方を向き、一言。「カーネルの苦しむ姿を見て忍びず、手を離したるその方こそ真の愛情の持ち主。この人形、そちのものである。これにて一件落着!」