IT投資促進で成長率1ポイントアップ?

とらぬ狸の皮算用

 総務省日本経済研究センターは、IT(ICT)向け投資を増やすことで、2011―20年度のGDP年成長率を平均約1ポイント押し上げるとの試算をまとめた。民間企業が積極的にコンピューターやネットワークの投資を進めることで、2%台後半の経済成長率の達成が可能としている。総務省は優遇減税策を考えている。
 世界的な景気低迷が10年度には一巡し、その後は穏やかに回復するとした場合、GDP成長率は11−20年度平均で1.6%となるとの見込みが前提となっている。策が奏功し、民間企業の設備投資が通常より年5ポイント増えた場合、平均2.6%の成長率が可能になるという。

余りに従来的過ぎる

 IT設備は陳腐化が激しいから、元々買い替え需要がある。その買替需要に減税策が利用されるだけで、法人税減税程度の効果しかないのではなかろうか。せいぜい、在庫調整が進む程度の効果しかないのではないか。

中長期を言うならもっと頭を使う必要はないか

 政府の景気支援策は何かと言うと、設備投資が中心になってくる。しかしハードよりソフト面の支援が必要なのでは無かろうか。
 情報処理技術者数は、日本は中国、インドに大きく引き離されている。水平分業の世界ではそれも不可避なものかもしれない。しかし、日本の大学には歴史があるが、逆にその歴史が負の遺産になっていはしないかという気がする。各大学で工夫はなされているが、現代の産業構造に沿った形での定員配分が十分なされていないのではないだろうか。
 その点新しく大学を作る方は、今必要な技術者を育てるために重点配分することが可能だ。インドの理系の最高峰がインド工科大学(IIT)だが、08年現在、インド全国に7校が設置され、総学生数は約8000人程度、ている。インド政府は更に8校のIITを新設予定だ。そして、2年後には1万2000人ぐらいになるだろうと言っていた。インド政府はITTの他にも情報技術大学20校の新設を決定している。このインドのパワーを見習うべきではなかろうか。職業訓練と合わせてこういった情報技術者を増やしたり、在職中の職業訓練を進める等、そうした人的資源の開発が重要ではないか。
 また世界から情報工学等の専門家が集まってくるような環境の整備が必要だろう。大学においても海外の学生との交流を進めるべきだと思うし、日本企業ももっと海外留学生を正社員として積極的に採用してほしい。政府がそうした流れを大きく作っている働きをしてほしいと思う。

と、このブログを書いた翌日の朝刊で

 と、このブログを書いた翌日次のようなニュースがあった。
 政府が検討している経済危機に対応したIT(ICT)の新戦略「3カ年緊急プラン」(仮称)の原案が1日、判明した。(1)医療現場のIT環境強化(2)IT人材の育成(3)電子行政の推進(4)環境対応型など新産業の創出、との4つの重点分野の具体策が提示された。3年間で官民合わせて3兆円の投資の増加と、40〜50万人の雇用創出を目指す目標を掲げた。」http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=AS3S0100D%2001032009
(3月2日追記) 
※ 詳しくは、3月2日付ブログ「政府のICT新戦略「3ヶ年緊急プラン」の実態」を見てください。http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090302/1235975166