SFCG 一般債権者への配当は望み薄

08年有価証券報告書を読み解く

 SFCGのHPに、有価証券報告書が載っている。これの07年版の貸借対照表(バランス・シート=BS)を見れば、SFCGの08年7月末時点での資産内容、負債内容がよく分かる。しかし最大の資産営業貸付金は譲渡担保に供され、過払い金引当金も不十分、証券化による簿外債務も有りで、一般債権者への配当はほとんど望めない恐れがある。

営業貸付金の殆どが譲渡担保

 SFCGの7月末時点での資産は、BSによれば6515億円。この中には、関係会社短期貸付金、立替金(対アセットファイナンス)、関係会社有価証券、関係会社株式等も含まれ、その合計金額は1230億円にもなるが、「親亀こけたら」でこれらの資産価値は殆どないだろう。繰延税金資産69億円、のれん代361億円、長期前払費用24億円も、実質的価値ゼロ。こうしたものを差し引くと4831億円しかない。
※SFCGの子会社T・ZONEコーポレーションは102社構想の下、日本管財等の上場株を保有していたが、SFCG破綻後の24日、SFCGの債権者日本振興銀行に権利が移っている。この結果T・ZONE株の価値はほとんどゼロになったと言っていいのではないか(09年2月28日訂正)。
 だから4482億円(貸倒引当金控除済)の営業貸付金がSFCGの資産のほとんどを占めていると言って良い。そしてこの4482億円のうち、3981億円が銀行等の担保に提供されているのである。被担保債権は2578億円だから、1403億円が余剰としてあると言えそうだが、それは営業貸付金が簿価通りの4482億円の価値を有しているとした場合の話だ。この営業貸付金を譲渡するとなると、利息制限法での引き直しも必要になるし、この不況下での貸し倒れリスクの増加も考えて、1403億円も余剰が出るとは思えない。

過払い金引当金=利息返還損失引当金

 利息返還損失引当金はなぜか流動負債では全く計上されておらず(少額の場合も計上されないが)、固定負債として135億円が計上されているにすぎない。貸倒引当金控除前の営業貸付金4710億円と比較すると、わずか2.87%が計上されているにすぎない。これは大手サラ金4社の引当金比率からしても異常に少額である。これだけの金額で済むはずがない。
 そもそも、この引当金処理は妥当なのだろうか。SFCGはこの引当金を基に36億円を配当しているから、引当金処理が妥当性を欠けば違法配当の可能性もある。

資産流動化=資産証券化による簿外債務

 SFCGの主要債権者が、リーマンブラザーズ、シティバンク等の外資がほとんどであることも影響してだろうが、債権流動化により営業貸付金242億円がオフバランスになっている(簿外に移っている)。このため、債権流動化による保証債務残高が同額の242億円あり、これも簿外にある。

アセットファイナンスとの取引

 SFCGは、07年11月、東京都には東京アセットファイナンス、神奈川には神奈川アセットファイナンスというふうに、各県毎に子会社を設立した。これらの会社はSFCGから債権を買い取るために設立された会社である。そして、08年7月末現在で、この各社に対する売掛金が49億円、これら各社に対する立替金が715億円存在する。売掛金49億円というのが、SFCGの営業貸付金の買受代金だということは分かる。問題は立替金の715億円だ。この内容が不明なのである。仮にこの中に過払い金が入っているとして、仮にそれが利息返還損失引当金に反映されていないとなると、引当金処理の正当性に疑念が生じてくる。

SFCGの債権者向け説明会

 24日の今日、SFCGの債権者向け説明会が東京都江東区内のホテルで開かれる。ぜひ出席させていただくつもりだ。
※ SFCG(旧商工ファンド)破綻 ついに悪運尽きる↓
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090223/1235367537
※ SFCG債権者説明会に行ってきました↓
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090224/1235498861
※ 佐藤隆文金融庁長官 商工ローンヨイショ発言の不明↓
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090223/1235404971
※ 与謝野財務相はまっとうな発言、経産省発表の相談窓口の実際
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090225/1235583648
※ SFCG破綻がもたらす日本振興銀行への影響↓
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090228/1235796661
※ SFCG子会社T・ZONEホールディングス↓
  保有株は日本振興銀行の手に
  http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090228/1235804959