過払い金返還引当金額 4社トップは武富士 ビリはアイフル

追加

 武富士は、最近急速に過払金の支払が悪化している。2010年6月にユーロ債の422億円分を繰上げ償還。市場もこれを好感し、株価も一時期上昇したが、問題はこれからだ。
 来年4月にはさらに400億円の社債償還を控えている。このため、武富士は過払金返金を11年4月以降に先送りしてくれるよう、債務系事務所を回っている。最近武富士と過払金の件で電話したが電話の向こうで「5割で落ちたぞ」なんて嬌声が上がっていた。以前は減額和解などしなかったのだが。
 訴訟をしても、判決の引き伸ばしに懸命だ。最近、武富士は、判決が出ても、支払猶予を願い出てくる。裁判所も対武富士訴訟の激増に疲れ果てており、武富士から基本契約書等の書証が全く出てこないうちから、「空白が1年以上有れば分断」を基準にしての和解をしきりに勧めてくる。ひどい裁判官は6月に第1回期日が入っているのに、次回期日を12月まで伸ばし、それまでに和解しろとまで言ってきた。

消費者金融大手4社 過払い金返還引当金

 08年12月末時点での大手4社の貸付金残と返還引当金額、引当金率は次の通りだ。これを見て分かる通り、武富士引当金率の高さが突出している。武富士は08年9月末時点での引当金は3332億円だったのが、4割も増えている。逆にアイフル引当金率が異様に低い。アイフルは不動産担保ローンの比率が高いが、アイフルの場合不動産担保でも25%程度の利率で貸し付けていることが多い。しかも武富士の55.7%から見ても5分の1以下。低すぎるような気がする。
 武富士  貸金残9959億円   引当金4638億円(55.7%)
 アコム  貸金残1兆3532億円 引当金3016億円(22.3%)
 プロミス 貸金残1兆6101億円 引当金2459億円(15.3%)
 アイフル 貸金残1兆4062億円 引当金1319億円 (9.3%)

過払い金返還引当金=利息返還損失引当金

 企業会計上、将来発生する可能性が高く、見積もり可能な費用については、引当金として負債勘定にすることが求められている。
 たとえば1年以内に返済すべき借金があれば、それは流動負債として、次年度以降返済すべき借金があれば、バランスシート(資産と負債の項目別対照表)の負債欄に計上される。今後過払い金を払うことがある程度確実だということになれば、1年以内に返還が予測される金額を流動負債として、次年度以降返還が予想される金額を固定負債としてバランスシートに載せるよう求められることになる。

過払い金返還引当金はいつから始まった

 06年1月24日の最高裁第3小法廷判決により、グレーゾーン金利がほとんど否定されることになり、過払い金返還に大きく道が開かれた。これがきっかけとなって、日本公認会計士協会は06年10月、「消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」を公表。このルールが06年9月の中間決算から適用され、消費者金融各社は過払い金返還引当金=利息返還費用引当金を積み立てるようになった。http://www.ek.tohmatsu.co.jp/webai/webkj/0611/0611_2.pdf

09年1月22日判決の影響

 09年1月22日最高裁第1小法廷判決は、リボルビング方式で借りている場合は、途中完済したとしても、その後の借入が予想されるため、契約自体が終了しない限り、時効は進まないとした。3月3日に第3小法廷、3月6日に第2小法廷でも、同種事案についての判決が予定されており、これらの判決が1月22日判決と同様の結論を出すとなると、業者側の時効主張はかなり認められにくくなる(カードを返却・破棄した場合は、返却・破棄後10年で時効にかかることになるだろうが、続けて使える状態であれば時効は開始しない)。
 特に影響大なのが、完済した借金(債務)である。完済した借金が、利息制限法金利を超える利息をとっていたものであれば、ほぼ100%過払い金を含んでいる(途中和解して分割払いで完済した場合は過払い金はない)。こうした過払い金を潜在的過払い金債権ともいうが、これについての引当金を積み立てるとなると、かなりの増額が必要になる。

追加

 引当金ビリのアイフルが、09年9月18日、ADRという対金融機関の債務整理手続をとることになった。やはり無理をして引当金を抑えていたのが抑えきれなくなったということだろうか。意外なのは積立金トップの武富士が、09年9月になって、「来年4月以降じゃない。」と払えないとか、「36回分割で払わせてくれ」だなんて言ってきたことだ。アイフルを見て「じゃあウチも」ということなのか、それともメインバンクを持たないため本当に苦しいのか。2社とも、オーナーの影響力が強く、自分の支配力が削がれるということで、銀行との提携に消極的だった会社だ。
 4社の中で一番財政的に安定しているのがアコム。何といっても三菱UFJフィナンシャル・グループ が37.45%の株式を保有しているうえ、財務内容も安定している。プロミスも三井住友銀行の子会社であり、同行が株式の20%しか保有している。しかしアコムに比べると財務内容はよくない。貸付金と現預金の総合計が1兆5000億円あるが、今年1年以内に返済すべき負債は6000億円近くもある。09年10月、オーナー社長が実質退陣し、三井住友銀行の元役員が社長に就任した。三井住友銀行の支援体制が強化されたと世間は見るだろうから、資金繰りも改善されそうだ。(09.10.3、09.10.18)

武富士は鉄板

 武富士の財務は表面健全そのものだ。09年9月末時点で、現預金と貸付金の合計は7931億円、今後1年間で払うべき流動負債は1374億円、その他の固定負債は1851億円。固定負債中長期借入金は269億円しかない。アイフルなんか現預金と貸付金併せて1兆2862億円あるが、流動負債は6097億円、固定負債は4113億円、ADR手続をとったのは仕方ない面がある。これに比べ、武富士の財務は表面健全そのものである。
 武富士は、09年11月16日、18年を償還期限とする転換社債(700億円)について400億円分を上限に、額面の50%以上の現金か、25%以上の現金と残額分の普通社債に希望に応じて交換すると発表した。
 現在武富士は、裁判しても和解金の支払いは6カ月後になる。訴訟して判決をとっても、支払いは来月にしてくれと言ってくる。武富士キャッシュフローがよくないのは事実だろう。しかし、今日の金はなくても、明日の金はあるのが武富士だ。黒字倒産の危険もなくはないが、過払い金は全額ではないが十分戻ってくる。(10.02.24追加)

過払いつから

 過払+いつからを検索するとこのブログが上位に来るらしいので一言。過払金は過払金を受領したときから発生しますが、要はこれで検索した方は「過払金の利息」について聞かれたいのでしょう。利息は受領後直ちに発生するというのが、最高裁判例です。