ヒラリー訪中 中国で何が語られるのか

ヒラリー訪中

ヒラリー・クリントン国務長官が09年2月20日から22日にかけて訪中する。クリントン長官は、ブッシュ政権が、中国との協議が、経済関係に終始していたことを批判。より広い国際分野での協力を中国に求めるという。
クリントン長官は、就任前に米上院外交委員会が行なった公聴会で、中国と協力する分野として、反テロリズム、核拡散防止、気候変動への対応、国際金融市場を上げている。

テロリズム

 これは中国にとって「待ってました」だ。米国からすれば反テロリズムは対アルカイダだが、中国で反テロリズムと言えば、対東トルキスタンとなる。中国の新疆ウィグル自治区の原住民はイスラム教徒のウィグル人。49年に中国に一方的に編入されて以降、中国の支配下にあるが、独立運動が絶えない。
独立勢力は、反右派闘争で独立派幹部が根こそぎ粛清され、大躍進運動でウィグル人1000万人ほどが餓死し、ウィグル人のみ出生制限が行われ、他方1000万人もの漢人が入植するなど、民族浄化が行われていると主張している(08年11月29日付ブログ)。中国政府はこの独立勢力をテロリストとしており、米国お墨付きで自由に弾圧することが可能になる。
参照:http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/228/022811.pdf

核拡散防止

 これは北朝鮮からの核拡散の危機を言っている。現金正日政権が他国に核製造技術を伝えないよう、中国が圧力をかけてくれることを期待している。しかし一番の問題は、金正日が死ぬ等して現政権が崩壊するときの対応だ。昨年金正日が倒れたことで、この問題が現実のものとなりつつある。金正日の死亡=北朝鮮体制の崩壊とは断定はできないが、可能性は大いにある。当然「その時」に備える必要がある。
また北朝鮮核兵器も問題だ。中国は北朝鮮が崩壊すれば、朝鮮半島から核をなくしたいだろう。統一朝鮮が自由主義国家となれば、そこに核が存在するのは望ましくない。いざ有事の際に、中国が北朝鮮の核を自国に移動することは当然考えられる。米国としても韓国に持たせるより、中国に持たせた方がよいだろう。この点は利害が一致する。
難民問題も問題だろう。難民が中朝国境に押し寄せれば、中国は、国内の混乱回避を名目に北朝鮮国に出兵することも考えられる。中国にとって北朝鮮は友好国だから、北朝鮮政府の要請を受けての出兵ということもあるかもしれない。中国は北朝鮮国内の地下資源の権益を有しておりその保護もあり、介入する可能性は高い。その際、中国と米韓との間に、どのような調整が可能なのだろうか。こういったことも話し合われるのだろうか。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080108/kor0801081930003-n1.htm)。
中国としては北朝鮮難民を受け入れることは考えていないだろう。朝鮮との国境地帯には朝鮮系住民が多く住んでおり、中国はこれら朝鮮系住民が分離独立を求めるのを恐れている。同じ民族が隣国で南北統一を果たせば、民族意識が高まりかねず、そのきっかけとなりかねない難民流入は求めないであろう。

気候変動

 米国が気候変動対策について協力を求めるのは、人道的見地からではない。排出量取引の枠組みの中に中国を取り込みたいのではないか。排出量取引は、米中が日本から金を引き出す有力な手段になる。
09.2.2付ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090202/1233582874

国際金融市場

 本当はもっとなまぐさい話だろう。中国人民元切り上げの問題、第2回金融サミットに向けて現在のIMF体制=ドル基軸通貨の維持、米国債購入要請、そういったところだろうか。
人民元操作問題

IMF体制の行方