中国大学生大就職難 党中央は求職学生に地方に帰れと支持

中国の大学バブル

中国の近年の大学創立ラッシュは凄まじかった。大学卒業者数は97年には82万人だったが、2004年には239万人、そして09年には611万人である。いくら中国経済が好調だったにしてもこれは異常である。まだ景気が良かった04年時点で既に、9月時点(中国では新学期が始まる月)での就職率は73%だった(中国教育省発表)。それだだけで
今年8月卒業する大学生は611万人、04年の2.5倍に大卒者が増えているし、去年就職できなかった就職浪人も相当数いるだろうから、ただでさえ就職戦線は厳しいものがある。
中国では、9月が新学期だから、2月というのは日本の就職シーズンで言えば9月に相当する。中国では、例年この時期の大学生の就職率は50%を超えているそうだが、今年は20%にも満たないという。

党中央 学生に帰郷を指示

 東京新聞09年1月30日朝刊によると、党中央は国内メディアに「学生の就職難を強調せず、建設的な記事を書く」ようにと通達を出したばかりか、党学生組織である共青同を通じ休職中の学生団員に帰郷を指示しているという。
 中央がおそれているのは、職を失った都市労働者と、就職できない大学生の不満が結びつき、暴動が起きることだろう。中国で就職活動する大学生は、都市部のそれ専用のホテルに泊まって就職活動している。節約のために8人一部屋で泊まり、就職活動に励んでいるという。一方春節で故郷に帰っている農民工春節が終われば都市部に戻ってくる。これらの人々に仕事を与えることができないとなると、不満は一気に爆発しかねない。89年の天安門事件は学生だけの突出で終わり、これに加わる市民が多くなく、失敗に終わったが、今は違うかもしれない。今年は天安門事件20周年にあたる。仕事がなくあぶれている農民工らがこれに加われば、暴動は燎原に火がつくように広がっていく可能性がある。これは党中央にとって悪夢である。ことに北京、上海で暴動が起きれば、海外マスコミが大きく取り上げる。党中央が学生に帰郷を指示するのはこうしたことが背景になっているのだろう。

GDP8%も危うい

党中央は4兆元の景気拡大策を発表したが、本当に内需拡大に結びつくかは疑問がある。
(1月18日ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090117/1232212988
 中国政府はGDP成長率8%を目標にしている。これが達成できても雇用創出は800万人で、大卒求職者の全てを就職させることはできない。しかしこの8%の達成は危ぶまれている。IMFのスカロカーン専務理事は08年12月15日、中国の経済成長率が今年の9.7%から、来年09年は半分の5%台に急減する可能性があるとの見方を示した(東京新聞06年12月16日)。世銀は7%、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは5%という見通しを立てている。
(1月6日付ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090106/1231244720
中国国家統計局が09年1月22日発表した08年10〜12月のGDP実質成長率は前年同期比6.8%で8%を割ってしまった。
(1月22日付ブログhttp://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090122/1232612157

学生は地方に戻らないほうが良い

 党中央は大学生に帰省を勧めているが、いったん戻ったらしばらくは帰ってこれないのではないか。都市部で暴れてもらっては困るし、地方に置いておいたほうが、十分監視ができる。帰省した農民工も都市流入が規制されないだろうか。