中国はEUと接近か ドル基軸通貨はどうなる

ヨーロッパと中国が接近

 サルコジは、08年のG20、金融サミットで、ブレストン・ウッズ体制は終わった、基軸通貨はドルからユーロに移る、と訴えていた。しかし中国はこれに乗らなかった。胡錦濤はドル機軸通貨を支持するとしたのだ。中国の発言価値は飛躍的に高くなっている。ひょっとしたら、オバマの一言より、胡錦濤の一言のほうが、重いかもしれない。中国がドルの基軸通貨に異論を唱えれば、大きな流れが置きかねない。しかし中国は巨額の米国債を抱えているので、ドル暴落につながる基軸通貨の多極化の話に載れるはずがない。米国がヘリコプターマネーをできるのも、双子の赤字で生きながらえてるのも、ドルが基軸通貨だからだ。ドルが基軸通貨通貨でなくなる、ないし多角化した機軸通貨の一つに過ぎなくなれば、米国債は暴落してしまう。
 しかし中国は二つの矛盾する外交をし、その両者の成り行きを見ながら、一方を切り捨てることもできる国である。日本の米国ポチ外交とはレベルが違う。中国は本音では機軸通貨を多極化し人民元をその多極化した機軸通貨の一画にしたいと考えている。98年10月に訪中したサンテールEU委員長に対して、当時の中国首相朱鎔基は、外貨準備のドルを半分、ユーロに切替えると意志があると表明しているのである(10月31日ブログ「欧州対米国 経済的覇権を巡る争いが勃発か」)。心のそこでは、EUと付き合いたいのは山々なのだが、今の交際相手の米国とも二股をかけたい。両方とつきあって、米国からのお手当てが少なくなれば、金の切れ目は縁の切れ目でEUと付き合ってもいいかな。これが中国の本音ではないか。
 そんな中国がEUと4月にEU議長国であるチェコで首脳会談を行うことで合意した。4月2日にロンドンで開催されるG20首脳会合(金融サミット)後に行われる。金融サミットでの合意内容を踏まえて協議を行うことで一致したことを明らかにした。これはロイターの特ダネだ。1月30日EUの外交筋が明らかにしたという。
 EUの08年の議長国はフランス。サルコジはG20後にダライラマと会談したため、中国の逆鱗を買い、肝心な話をするきっかけを失ってしまった。対中国で、チベットは絶対触れてはならない話題だ。そのことは人民元札を見れば分かる。人民元の最高額札の100元の裏には人民大会堂が描かれ、次の50元の裏にはチベット・ラサのポタラ宮が描かれている。中国は面子を重視する。面子を汚されたとなれば、サルコジとの対話は不可能だ。しかしサルコジは08年のEUの議長国、09年の議長国はチェコだ。そのため対話再開のきっかけが現れた。
 EUと中国が何を話し合うのか。会談後、会談の表向きの結果は明らかにされるだろう。しかし、裏の会談結果は明らかにされないだろう。そしてその裏の会談結果が、世界を動かし、アメリカの命運も決まってくるのではないか。 

日本はどうする

 日本が当面直面するのは、今後為替介入するかどうか。円高是正ということになれば、ドルを買わなければならない。それは通常イコール米国債を買うことである。しかし、基軸通貨の威光を背景にしてのオバマのドルばら撒きはドルをいつ暴落させるか分からない。これ以上米国債を怖くて買えない、という声は与野党の中から出ている。民主党ネクストキャビネット財相の中川正春も、為替介入は行うが米国債は買わないといっていた(どういう方法を使うのかは分からないが)。与党議員からも同じ声を聞いたことがある。
※中国はIMFのSDRを基軸通貨にしようと提言(2009.3.26)
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090326/1238029993
※08年11月19日「夜の金融サミット」にも寄り道してください。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081119/1227079455