バイアメリカン鉄鋼条項 オバマはどうする

 09年1月28日、8250億ドルの景気対策法が米下院を通過したが、 米下院は米国製鉄鋼の購入を義務付ける「バイ・アメリカン」鉄鋼条項を承認した。これは、景気対策法案に基づき資金を供給される公共事業で使用される鉄と鉄鋼は米国製のみに限るというものだ。この条項が適用される公共事業は、空港、橋梁、運河、ダム、堤防、パイプライン、鉄道、公共輸送システム、道路、トンネル、港湾、桟橋等広範囲にわたっている。

バイアメリカン条項はこれが初めてではない

 1933年、大恐慌のなか米は、連邦バイアメリカン法を制定。これは、公共事業で使う物資やサービスなど米国製を優先的に使うよう規定した法律である。連邦バイアメリカン法と、わざわざ連邦の名前が冠せられているのは、地方政府が盛んにバイアメリカン法を作っているからである。その後、様々な例外規定ができ、海外企業であっても米国内に工場を持ち生産していれば適用外となっている。WTOの政府調達規定に違反しないように制限してきたという過程がある。しかし地方政府はWTOの適用外のため堂々とバイアメリカンをやっている。アメリカは不景気になるとバイアメリカンを言い出す。自由貿易主義を他国に主張しながら、自分の国では国内製品保護をどうどうやっている。いかにもアメリカらしい俺様主義だ。
 そしてこのバイ・アメリカン鉄鋼条項である。米製鉄業界はかつてない低い稼働率で操業しており、労働団体から猛烈なアピールがあり、こういった労働組合を支持基盤とする民主党政権としては無視できない要求だった。

保護主義に対する重大な懸念

 金融サミットでも保護主義の台頭を懸念する声が大きかった。というのも世界大恐慌があれだけ猛威を振るった一番の理由が、世界が保護主義に走ったからだ。そしてその結果起きたのが世界大戦だった。その悪夢を繰り返してはならないのである。世界はどこの国が保護主義に走らないか、戦々恐々としている。米国の今回のバイアメリカン鉄鋼条項はまさにフライングを犯したようなもので、日本を含め、世界中からブーイングを浴びるだろう。
 さっそく、欧州委員会は29日、米景気対策法案で米国製鉄鋼の購入を義務付ければ対抗措置をとると警告した。29日これより先、欧州鉄鋼連盟が「バイ・アメリカン」条項はWTOルールに違反しており、欧州委に介入を求める意向を示していた。
 31日の報道では、オバマも再検討を始めたという。
※2月3日付「米上院 バイ・アメリカンを鉄鋼以外に拡大」
 http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090203/1233664725