オバマの中東に特使派遣 その最中停戦後初の空爆

オバマが特使派遣

 オバマはミッチェル上院議員を中東に特使として派遣。特使は1月28日、イスラエルオルメルト暫定首相らと会談。29日にはパレスチナ自治政府アッバス議長と会談する。ミッチェル氏は、北アイルランド(Northern Ireland)紛争で米特使として和平交渉を仲介した経験もあり、そうした経験を買われての特使任命だ。
 しかし、アッバースに会っても問題は解決しない。

ファタハハマス 選挙で選ばれたのはハマス

 そもそもアッバースの率いるパレスチナ自治政府自体、民主的正統性がないからだ。06年1月のパレスチナ評議会選挙(日本の国会に相当)で、ハマスアッバース率いるPLO主流派ファタハが激しい選挙戦を繰り広げた。圧勝したのはハマス。3月ハマスのイスマイル・ハニーヤが首相となったが、アッバースが政権に居座った。その後、ハマス自治政府のあるヨルダン西岸地区を追われ、ハマスは本拠地のガザからファタハを追い出した。パレスチナは分裂国家の状態にある。民主主義のレベルで言えばハマスに正統性があるが、アメリカを中心とする国際社会はファタハ政権を支持している。というのも、ハマスはテロ集団、ファタハは穏健派という色分けがされているからだ。
 ガザが強く求めるのはイスラエルが現在も行っている経済封鎖だ。イスラエルが検問所を設け、人の出入りも、物の出入りも全て支配している。通行が時間的に限られており、時にはいつ開くとも分からないまま封鎖される。現地の国連機関も救援物資を運び込めないため、絶えず非難している。ガザに掘られたトンネルも、イスラエルが経済封鎖をし、はっきり言ってガザを兵糧攻めにしているため、生活物資の流通手段となっている。ガザ近辺にトンネルは2000もあるという。トンネルを作っているのはエジプトの民間人。トンネルの通行料を徴収することで商売が成り立っている。民家の床下からトンネルを掘り、出入り口は普段は家具を置いたりして隠している。ガザとの境界付近にはトンネルで儲けで建てられたトンネル御殿がいくつもあるという。
 この経済封鎖が続いている理由の一つとして、パレスチナ自治政府がこれを黙認していることがある。ガザはハマスの根拠地。ガザの住民の生活が不自由になればなるほど、ハマスの人気が落ちると踏んでのことだ。

オバマによる解決策

 中東における米国の存在は絶大だ。エジプトのムバラクが不正占拠で政権を維持できるのは米国の後押しがあるからだし、サウジ、クウェート等は米国の軍事力で安全保障を保てている。イスラエルは米国の庇護の下、国境を拡大してきた。米国がクビをふらなければ何も動かないし、中東を解決できるのは米国しかない。
 米国大統領オバマはこの錯綜した問題をどう解決しようとしているのだろう。経済封鎖を即刻解除させるのかどうか。ハマスとは交渉をするのかどうか(裏交渉ということであっても)。パレスチナの分裂に対していかなる意見を述べるのだろうか。
 イスラエル軍は29日、ガザの武器製造施設を空爆した。それというのも28日にロケット攻撃があったからだが、ファタハ系の武装勢力が、このロケット弾攻撃の犯行声明を出している。ここにもねじれが存在する。