オバマも認める 中国政府による人民元為替操作 

中国元は安すぎる

 ストロスカーンIMF専務理事は、26日、ジョージタウン大学での講演で「われわれにとって必要なことは、中国が為替政策を変えつつ、経済成長を輸出主導から内需主導へとシフトしていくことだ。人民元は大幅に過小評価されている」と語ったという[詳細は1月26日付ロイター]
 この発言の意味するところは「中国人民元は本来あるべき為替相場からして安すぎる。これは輸出に有利なように政府が為替政策で誘導しているからだ。為替レート操作をすることで輸出に依存するのではなく、本来あるべき為替レートの下で内需拡大に努めるべきだ。それが我々IMFの望みである。」ということになる。

人民元は政府のコントロールで自由自在

 1月22日のブログで、「中国元の為替レートは、通貨バスケットを参考にして、人民銀行の外貨管理局が決めている。だから当局が元安に誘導しようと思えばそれも可能だが、時期が時期だ。どこも輸出が伸び悩み、苦労しているのに、中国当局が元安へ誘導すれば、相当な反発が予想される。」と書いたとおり、中国人民元のレートを操作しているのは人民銀行という中央銀行だ。中央銀行は行政府から独立した存在であることが必要だが、中国にはそういう常識は通用しない。そのため中国政府は人民銀行を通じて為替レートをコントロールすることができてしまう。
 次期米財務長官ガイトナー氏は21日、上院財政委員会の指名承認公聴会で、「オバマ大統領は中国が人民元を操作していると確信していると発言。「人民元の為替操作は引き続き重大な懸念事項と考えるか」と問われ、「重要な問題であると確信している」「以前にも述べたとおり、米国の主要な貿易相手国が市場原理によってレートが決められる柔軟な為替制度を運用することが、米国および世界経済にとって非常に重要であると考える」と述べた(詳細は1月21日付ロイター)
 人民元が政府によって恣意的に操作されていることは、常識ではあったが、ブッシュ政権ではそのことは暗黙のうちには理解されてはいても、公然と発言されることはなかった。ガイトナーが失言したとは思えず、いわば中国に対し牽制球を投じたのだろう。

米国の人民元

 しかし、米国はあまり声高に中国政府の人民元の為替操作を言えない事情がある。ひとつには中国が米国債の最大のお得意様だからだ。米国債保有高は中国が世界で一番だ(2位は日本)。オバマは8250億ドルを景気対策にあてるとしているが、当然国債を発行してこれをまかなう必要がある。そうした中で、オバマとしても中国を怒らせるようなことはできない。
 しかし、ここのところ、中国の対米輸出も減っているが、それを上回るペースで対米輸入が減っている。中国は口では内需拡大を言っているが、やっていることは外需拡大だ。米国としては、中国に国債を買ってほしいが、かと言って貿易赤字の拡大は避けたい。
 相矛盾する政策課題の中で難しいかじ取りを迫られるだろう。