英ポンドの下落止まらず

 英金融機関の急速な信用低下、英政府の景気対策による財政の急速な悪化から、今週に入り英ポンドの下落が加速している。20日には1ポンド=1.386米ドルまで下落。そのため英国債の格付けが引き下げられるのではないかとの懸念がアナリストの間で台頭し、「通貨危機」という言葉がささやかれ始めた。

ユーロ導入に抵抗感ある英国民

 英国はユーロ圏に属していないため、英国一国の経済がそのまま、貨幣価値に直結する。英国がユーロを導入していれば、こうはならなかった。しかし英国民は自国経済に絶対の自信を持っており、ユーロを導入するなど、貴族が平民の娘を嫁に貰うのも同じくらいに思っているのかもしれない。これだけ英ポンドが下がっても、英国民はポンドを捨てようとしていない。
 英BBCが08年12月19〜21日に行った世論調査によれば、英国民でユーロ導入に反対が71%、賛成はたったの23%だった(日経ネット09.1.10付記事)。当時すでに対ユーロで過去1年間で3割近くも下落していたのにである。

デンマークスウェーデンもユーロ導入へ

 デンマークは昨秋、通貨防衛のための為替市場介入を強いられた結果、10月だけで約2割も外貨準備高が減少。10年にも改めて国民投票を実施しユーロ導入の賛否を問う意向だ。これまで英国、デンマーク同様にユーロ導入に抵抗していたスウェーデンもユーロ導入を目指すと表明。EUに加盟もしていないアイスランドまで手をあげているという(2009年1月15日付読売新聞)。

英国の経済の現状

 英国は、米国同様、金融国家を目指し、それが成功し高成長を遂げてきた。不動産市況も好調。不動産は下がることを知らないため、英国民はローンを組んで盛んに不動産を購入。このため就業人口の2割が金融、不動産関係と言われる。
 08年度版フォーチュン・グローバル500によると、総収入を指標とした企業ランキングによると、上位100位に含まれるイギリス企業は、9社。石油メジャーのBP(4位)/金融のHSBCホールディングス(20位)/民間銀行のロイヤルバンク・オブ・スコットランド(36位)/上記RBSを傘下に持つ金融グループのHBOS(45位)/小売のテスコ(51位)/保険のアヴィヴァ(69位)/金融のバークレイズ(70位)/携帯電話事業のボーダフォン(85位)/金融のプルデンシャル(94位)と、金融関係が強い。しかし世界36位のRBSは、1月20日付発表によると08年度決算が最大で280億ポンド、日本円で 3兆7000億円という巨額の赤字決算に陥る見通しとなった。英国の8〜10月の平均失業者数は前の3カ月から13万7,000人増えて186万4,000人。失業率は6%と過去9年近くで最も高い水準を記録した。
 英国民も見えを捨てて、ユーロの傘の下に入った方がいいかもしれない。