定額給付金が実施されれば大流行  還付金詐欺に注意  

還付金詐欺が一番のトレンド

 振り込め詐欺の中で最近の一番のトレンドがこの還付金詐欺だ。これまで振り込め詐欺の主流はオレオレ詐欺だったが、トップが交代しそうだ。今後定額給付金が政府から出ると言うことになると(反対の声が大きく、先行き不明であるが)還付金詐欺は大流行するはずだ。
 還付金詐欺とは、例えばこんなものであえる。ある女性のところに、社会保険事務局総務課なるところから電話が来る。「9月に3万5400円の医療還付金を交付する旨ご連絡していたのですが、ご覧になっていませんでしたか。」「早くしないと還付金が支払われなくなるので、今からいう電話番号に、すぐ電話をかけてください。」と言われる。女性が慌てて、そこに電話する。すると「はい。こちら還付金支給係の田中といいます。」と言って、男が電話に出る。女性が名前を名乗ると、この男性は「もう期限が迫っていて、今日にもご入金いただかないと、還付金が支払われなくなります。もう時間がないので、携帯電話とキャッシュカードを持って、今すぐ、お近くの●●スーパーのATMに行っていただけますか。ATMを使ってお受け取りできますので。操作方法は私がお教えいたしますので、ATMに着いたらすぐ電話ください。」というのである。時間は午後2時。今日中に電話しないと還付金を受け取れないと考え、女性が慌てて家を出、そしてATMに着いてすぐに携帯で田中に電話する。すると田中が次のように言って、お金をだまし取るのである。
「まずキャッシュカードを入れてください。最初に残高照会のボタンを押してください。表示される数字を右端から読んでください。」
〜ATMの操作画面に1,282,898という数字が出てくる。預金残高が128万2898あるということだ。女性は言われたとおり「8、9、8、2、8、2、1」と読み上げる。こうやって、女性に残高を読ませられていると気づかせないようにするのだ。
 その後田中は女性に対して、矢継ぎ早に指示を出す「では確認のボタンを押してください。そして、いったん、取消ボタンを押して、カードを入れ直してください」「暗証番号をご入力して、振込ボタンを押してください。」「A銀行を選んでください。」「B支店を選んでください。」「カタカナでスズキハルオと入力してください。」「次にあなたの通知番号、1282000をご入力ください。」「口座名義と同じ番号を押して、あなたの電話番号を市外局番から入力ください。」「そして確認ボタンを押してください。」
〜女性は早く入金を済ませないと期限に間に合わないと、使いなれないATMを必死に操作している。しかも田中から矢継ぎ早に指示が来るため、指示に追いつくのに必死で、ほとんど自分が何をやっているか分からないでいるのだ。そして振込手続が終わると、田中は最後の指示を言う。
「振込明細票は不要ですので、安全のためすぐ破棄してください。還付金は近日中にお振り込みしますので、しばらく待っていて下さい。」
 なぜだか分かりますよね。明細票を見たら、自分が128万2777円を振り込んでいたんだということが、ばれてしまう。そうしたら銀行に駆け込まれて、送金手続がストップされてしまうかもしれない。だから捨てさせるのである。
(このやり方は「政府インターネットテレビ」で放映されている)

すべての詐欺に共通する要素

 すべての詐欺に共通する要素は、騙そうとする相手を急がせることだ。この例でも女性は「今日中に振り込まないと還付金がもらえない。」「3時までに間に合わせないと還付金がもらえない。ATMの操作を間違えたら大変だ。」と考えるから、通常だったら警戒すべきことを警戒しないので、自分が振り込みをしていることに気がつかないのである。
 警視庁の調査によれば、東京都内で300万円以上の振り込め詐欺の被害に遭った人の6割が電話を受けてから2時間以内に現金を振り込んでいるという(東京新聞08.12.22朝刊)

警察の呼びかけ

 警察は、次のように呼びかけている。
 そもそも、役所が還付金を受け取るのに、ATMで受け取るようになどとは言わない。
 携帯を持ってATMに行くように指示されたら、まず振り込め詐欺を疑え。
 振り込め詐欺に遭っても被害が最小限に済むように、カードでは10万円以上振り込めないように銀行で手続してほしい。

警察が求める協力

 警察は言う。
 もし携帯電話をかけながらATMで振り込んでいる人が、銀行の人にすぐ声をかけてほしい(銀行店舗以外のATMの場合、スーパー店員はこういった訓練はしていないので、自分から声を掛けることが必要かもしれない。)。
 帽子を被り、サングラスをして振り込んでいる人間がいたら、犯人の疑いがあるから、すぐ警察に連絡してほしい。逆に、自分が振り込むときは、紛らわしいので、帽子、サングラスをつけないでほしい。
 警視庁は08年、10月を振り込め詐欺撲滅月間とし、都内1000か所のATMに警察官をはりつけさせた。そうしたところ月間被害件数が197件と、20か月ぶりに200件を割ったのである(東京新聞08.12.2朝刊)。

最近は小包で送らせたり、犯人側がお金を直接取りに来ることもある

 オレオレ詐欺で、被害者の送金が9件合計で1500万円が、現金をバイク便で送る方法で行われ、その容疑者が08年10月20日、栃木警察署に逮捕された(東京新聞08.10.21朝刊)。こうした方法はよく融資保証金詐欺で使われ、その場合エクスパックがよく使われるが(よく「本の中に現金を挟んで送れ」などと言われる)、振り込め詐欺で使われるのは珍しい。
 警視庁の調査では、08年1月から9月にオレオレ詐欺で300万円以上の被害にあった人の8割は銀行送金を使っていたが、残りの2割はバイク便や、友人をよそおった人物等に現金を渡すケースだった(東京新聞08.12.22朝刊)。