築地市場の移転先 ベンゼンは環境基準の4万3000倍、水銀は24倍、シアン化合物は860倍                         都は土壌汚染処理費用を半減させ移転強行

築地市場の移転問題

 築地市場は日本の台所だ。日本全国から魚が集まってくる。下関のふぐも、大間のまぐろも、最上級品は築地に行く。築地の場内にも、場外にも魚を食わせる店が立ち並ぶ。築地一帯が東京の食文化を支えているのだ。しかし都は、東京ガス豊洲ガス工場跡地を購入、築地市場はこちらに移し、市場跡地は東京五輪のメディアセンターの敷地にすることになった。
 しかし、この東京ガス工場跡地がとんでもない土地であった。水銀が環境基準の24倍、発ガン性物質のベンゼンが4万3000倍、さらにシアン化合物が860倍という凄まじいくらいの土壌汚染があったのだ。都はそれでも移転を強行する考えだ。当初1000億円を使って汚染土壌を除去、建物地下にコンクリート等を敷き詰め、地下から有毒物質を含む水が上がってこないようにする計画を立てた。

役人はどうして豊洲に移転させたいのか

 都の役人はどうして、1000億円も使って、しかもそんな危険な土地に築地市場を移転させようとするのか。ズバリ、自分たちのためである。もし計画を白紙に戻したらどうなるか。豊洲の土地購入を決めた都の幹部職員が非難される。彼らは都民の健康などお構いない。それより自分の上司をお守りするのが大事なのだ。こういった問題で幹部職員が処分されたり、その後の出世が妨げられることがあってはならない。馬鹿幹部をお守りするため、豊洲移転は断じて変えることができないのである。
 当初は、都知事もそれに加担していた。築地の市場をつぶせば東京五輪メイン・プレス・センターの建設が可能だ。都知事東京五輪にご執心だ。役人はそれが分かるから、都知事に「築地をつぶせばメディアセンターを建設できますよ」と吹き込んだのだろう。麻生首相いわく、「官僚を使いこなしてこそ政治家」だそうだが、逆だ。役人は政治家に使われるふりをして、政治家を操っているのだ。「政治家をおだてて使いこないこそ官僚」なのだ。石原知事も役人に操られた一人だろう。

役人はさらに悪巧みを思いついた

 都の専門家会議は工場跡の地下2メートルまで土壌を入れ替え、建物下には水が地表に上ってこないように工事し、高さ2・5メートルの盛り土をする(東京ドームの約1・4杯分に相当)よう要求。汚染対策費は1000億円を超えると試算された。
この専門家会議の結論自体、批判があった。当初は土壌汚染は地下2メートルまでとのことが実際には3〜5メートル地下に集中しているからである。また専門家会議は(というより都の調査結果というべきかもしれないが)地下の2メートルより下は有楽町層という水を透さない地盤だから、入れ替えする土壌も地下2メートルで大丈夫と言っていたのだが、これも大嘘だった。実は粒子の粗いシルトと砂層で構成されており、地盤としても軟弱なために建物の基礎を支えられないということが分かったのだ(となれば地下の強固な地盤にまで杭を打たねばならず、土壌入れ替え後に地下の有毒物質が地表に上がってくる)。
 しかし、都の官僚はさらに悪辣だった。その後都はもっと安くできないかと広く民間業者に意見を求めた。結局、専門家による「技術会議」で、有害物質の処理は、費用のかかる高熱処理よりも中熱処理で対応可能、濃度の低いものについては水などによる洗浄処理で可能と判断したのだ。さらに、取り除いた汚染土壌も高い輸送費のかかる都外ではなく、都内で確保できるという。
1月15日15時21分配信 産経新聞
 予算が少なくなればその分都議会も通りやすいだろうという判断だ。

都議会与党の公明党

 都議会公明党築地市場問題調査特別チーム(石川芳昭座長)は08年7月18日、これまでに都が検討した移転候補地を視察するなど、調査活動を展開。視察を終え、石川座長は「移転先を検討する場合、さまざまな条件を考慮する必要がある。さらに調査し、議論を深めたい」と語ったという(http://www.komei.or.jp/news/2008/0719/12040.html)。同チームは同年11月13日にも築地市場を視察する等調査を続けている(http://www.ishikawa-yoshiaki.com/topics_20081114.html
 公明党調査チームがどういう結論を出すかは不明であるが、都議会は08年7月に選挙がある。公明党は都議選のために衆議院選挙はその後にするように自民党に要請しているという動きもある。かかる政治環境の中で、移転問題について都と意見を意にできるのか不安に思うところだ。

都知事もテンション上がるかも

 一度は専門家会議の工事案からすると、完成時期が夏季五輪のある16年までずれ込むと予想され、報道機関の取材拠点「メインプレスセンター」を、築地市場ではなく、東京ビッグサイトに建設することになっていた。また新工事手法によると、五輪開催時期に間に合うため、また用地は築地に戻ってくるかもしれない。

豊洲の土地は東京ガスに熨斗をつけて返せないのか

 詳しい情報がないので判断できないが、東京ガスが土壌汚染の程度を偽って都に売却していたとしたら、瑕疵担保責任を問うことが可能だが、時効が問題になる。しかしもし東京ガスが土壌に関し明らかな嘘をついていれば、都は詐欺により売買契約を取り消すことができる。ここで気になることがある。都議会で、共産党は、汚染の原因について都を追及。東京ガスの元社員らから証言を得たとして、「(ガス製造の過程で)地面に直接、おがくずを敷き、タールを流し込んで混ぜる作業が長期間続けられていた」と指摘したという。同社はこれまで、ドラム缶が腐食し、中のタールが漏れ出したと説明している。この日の答弁で都側は「東京ガスに照会したが、そのような話は聞いていないと回答があった」とした。もしこの共産党の主張が真実だとすると詐欺による契約取消が認められるかもしれない。詐欺取消なら、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様となる。