中国のテレビニュース 視聴ボイコット運動

中国の若手知識人ら 御用ニュース番組視聴拒否をネットで宣言

(MSN産経ニュース2009.1.13 22:11) 
 中国の若手学者、弁護士ら22人が09年1月12日、国営中央電視台(CCTV)の視聴をボイコットする宣言をインターネット上で発表した。宣言はボイコットの理由として、CCTVのニュースや教養番組が「社会の矛盾の表れである暴動事件などを意図的に隠蔽している」「歴史の真相を歪曲(わいきょく)している」などを挙げている。
 新浪など大手のポータルサイトに掲載された宣言はすでに削除されたが、個人のブログなどに少なくとも数万件転載されたため、13日夕になってもネットで全文を検索できる。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090113/chn0901132213004-n1.htm

昨日のテレビでも現実を直視しない報道

 中国のテレビ局(電視台)が不況下の中失業者があふれているのに、それをごまかすかのようなニュースを流していることは、1月7日のブログ「中国のテレビニュースで繰り広げられる政府の情報操作」で書いたとおりだ。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090107/1231297261
 NHKのBS1で放映していた昨日14日のCCTVのニュース新聞聯播では、「春節前にもかかわらず、多くの客が店舗に押し寄せ、午前2時まで閉店できない有様」とのニュースと「浙江省産ミカンが取過で在庫が膨れているため地方政府が都市部でミカン販売キャンペーンをやったところ、みんなが争って買っている」とのニュースをやっていた。嘘とは言わないが、倒産や売上不振に悩む国民の目線からすると「現実を表していない」との非難されても仕方のない内容だ。

北京でも陳情団体が党中央に直訴

 北京にある国務院新聞弁公室の庁舎前で1月14日午前、各地の当局の腐敗や非人道的な対応に怒った陳情者ら300〜400人が「中国には人権がない」などと抗議し、100人以上が警察車両で現場から連行された。当初は数十人だったが、北京に長期滞在している地方の陳情者が続々と集まり、抗議文書を掲示するなどの行動に発展したという。
 08年11月、中国政府は「国家人権行動計画」を制定することを明らかにしていた。同計画では、政府の職能を整備し、民主主義を拡大し、法治を強化し、民生を改善し、女性や児童・少数民族の特殊な権利を守り、全社会の人権意識を向上する、人権に関わる各方面の内容が盛り込まれることになっている。そしてこの「国家人権行動計画」は、国務院新聞弁公室と外交部を筆頭に制定されることになっている。(「人民網日本語版」2008年11月5日)。
 そのため、新聞弁公室に押し掛けてきたのだろう。海外メディアが集まってくると、陳情者たちは海外メディアにも自分たちの立場を説明し始めたため、こうした報道されたようだ。

党は腐敗追放を言うが

 地方党幹部が私腹を肥やす中で、地方住民は財産を奪われ、それに抗議をすれば弾圧されている。党中央は、農民の土地の耕作権を保護し、適正な金額で土地収用を行うよう、法律で定めてくれている。彼らからすると、彼らを救ってくれるのは党中央しかない。地方政府が党中央が作った法律を守っていないことを、党中央を知れば、地方政府を叱ってくれるのではないか。陳情者達はそう信じているのだ。こうした陳情者は以前から北京に大勢いた。北京五輪開催中は、世界のメディアに見せたくないため、陳情者は一斉に追い払われたが、五輪も終わり、また地方から戻ってきている。
 党もこれに答え、中央紀律検査委員会は08年1月14日、腐敗システムの処罰改善と防止、不正行為の調査・処分を強化、大衆からの訴えのあった重大問題の解決に努め、党幹部への監督も強化する等の方針を定めた。
   http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2009-01/15/content_17114638.htm
 法律の上では、農民らの保護を図っている。党中央も汚職追放は以前からさんざん言ってきたことである。今度こそ、ということだろうが、国民の我慢は限界に来ている。しかし憲章08が言うように、中国では「法はあっても法治はない」というのが現状で、本当のところ、どうなるか分からない。もしこういった方針がお題目に終わり、相変わらず地方党幹部が、汚職や職権乱用によって荒稼ぎを続けるのであれば、国民の暴動を抑えられなくなる可能性もある。

胡錦涛はどうするのか

 中国の党中央は、胡錦涛をトップとするグループと、江沢民系統の上海閥とで、権力闘争が行われている。胡錦涛は、08年3月15日の第11回全人代で再び国家主席に選出されたものの、自身が推す直系の李克強を国家副主席にすることができず、上海幇の推す習近平が国家副主席に就任した。それまでは胡錦涛の権力は盤石化しており、上海閥は勢力を失ったと解されていたが、この人事はまだ上海閥がトップをうかがう力を持っていることをうかがわせた。もし今回胡錦涛が、処理を誤り、暴動が激化し、抑えられなくなると、権力の座を脅かされることになりかねない。リアリストである胡錦涛は、自分の権力基盤が守るためには鬼にもなることができる人物だろう。胡錦涛上海閥の争いが軍を巻き込むことにならないよう願うのみである