ゼロゼロ物件保証会社 国交省が法規制を視野に実態調査

ゼロゼロ物件

 敷金・礼金なしで入居できる賃貸物件をゼロゼロ物件と呼ぶ。家賃8万円の物件を東京圏で借りようとすれば、敷金・礼金が各2ヶ月分、仲介手数料が1ヶ月分、前家賃が1ヶ月分と合計6ヶ月分で50万円近くかかるのが普通だ(京阪神だと敷礼合計10か月ということころもある)。しかしおいしい話には裏がある。
 ゼロゼロ物件で家賃滞納した入居者が保証会社からいきなり追い出されるトラブルが続いている。このため国交省は今後の法規制も視野に、保証会社の実態調査に着手することを決めた。

ゼロゼロ物件の落とし穴

 敷金、礼金をゼロにすると、家主はその分リスクを負うことになる。そのため保証人という手もあるが、こういった物件を借りようとする客層はフリーター等の非正規労働者のため、保証人を立てるのが難しい。このためこういった物件に入居するのに保証会社を立てることが多い。
 保証会社も、こうしたお金のない人間から滞納家賃を取り立てるためという言い分もあるのだろうが、サラ金以上の取り立てが行われ、問題になっている。サラ金の場合、貸金業法の適用があって、勤務先への取立、夜間の取立はできなかったり、と借り手を保護する規制があるが、こういった家賃保証会社の場合こうした規制は全くないからだ。
 家賃を滞納しても、ただちに賃貸借契約を解除できる訳ではない。借りて早々支払がないとか、滞納が数か月に渡ったりとか、1か月の滞納でもそれを繰り返している場合とか、家主との信頼関係が破棄されたような場合でないと契約は解除できないとされている。しかし、こうした保証会社は、少しでも家賃が滞納があれば、退去を迫ってくることも多い。

法規制としてどのようなものがありうるか

 こうしたトラブルが起きる原因の一つとして、家賃滞納がどの程度に至ったら解除が認められるのかについて、法律が明確な基準を定めていないことがある。家賃を滞納しても直ちに解除が認められないことは前にも述べた。しかし最高裁判例は、家賃滞納があっても信頼関係を破壊するに至らないときは解除することはできず、また1回の延滞でも信頼関係が破壊されたような場合は解除することができるとしており、素人からしたら目安にも何にもならない基準しか立てていないからである。
 現在の判例に沿う形でガイドラインを明示したらどうであろうか。国交省はかつて、敷金がまったく帰ってこないトラブルの多発を受けて、借主退去後の家屋の傷で、どういったものが敷金での充当の対象になるか、ならないかをガイドラインで示したことがあった。そういった措置がまず考えられる。
 また、一つには、せっかくこうした判例があっても、契約書には「家賃を一回でも滞納した場合は解除する」という条項が書かれていることが普通である。実際そのような条項あっても、長期の延滞等、信頼関係が破壊されたような事情がなければ契約は解除できないのであるが、それを知らない賃借人は契約を盾に退去を迫られたらこれに応じざるを得ない。
 役所の今までのやり方で言うと、法規制をちらつかせ、業界団体を立ち上げさせ、その中でモデル契約書書式を作成させるという手法をとってきたので、今回もそういった手法を検討するかもしれない。
 その前提として保証会社を届出制にすることもあるのではないか。
 また保証会社が立退業務を行うとすれば、非弁行為として弁護士法違反に該当する。

スマイルサービス

 家賃保証会社ではないが、スマイルサービスといった、ゼロゼロ物件を提供する会社が、むちゃくちゃな立ち退きをして新聞、テレビでずいぶん取り上げられたことがあった。スマイルサービスは保証会社ではない。自らが管理を委託された物件を「一時使用契約」なる契約書を作って部屋を直接貸しているのである。確かに借家借家法、一時使用目的のための部屋賃貸には適用されず、前述の最高裁判例の対象外でもある。しかし住居で使用するような場合は、一時使用とは言えない。「一時使用」を契約書にうたっていようとなかろうと、法の適用を逃れることはできないのである。ただ素人をだます道具にこういう言葉を使っているにすぎない。
 スマイルサービスの作った契約書には、利用料を「1日でも遅延した場合は、違約金として利用料の10%を支払うものとする」とし、加えて施設再利用料として15750円を支払うとし、実際に徴収している。しかもこれをごり押しするために部屋のカギまで勝手に変えてしまう。しかし、消費者契約法9条は、延滞した場合の損害金の利率の上限を年14.6%としており、これ以上の利率を定めても無効だ。だから訴訟で争えば、借主のほうが勝つのだが、実際そのような上限利率があると知らないのがほとんどであるし、知っていても訴訟してでもという人はいないだろう。

レオパレス21

 なお大手のレオパレス21であるが、敷金、保証金のほかに結構初期費用がかかり、初期費用がまったくゼロとなる訳ではないので、気をつけたほうがいい。以下は、レオパレスのHPにも載っている家賃6万円のアパートを例にした支払いプランである。
 システム料金  60,000円
 前家賃(1ヵ月分)  60,000円
 共益費  3,000円
 環境維持費  520円
 鍵の交換費  3,150円
 ライフサポートサービス  25,000円
 抗菌施工費(オプション)  15,750円
     16万7420円
http://www.leopalace21.com/guide/lease.html