英語は英語で授業 高校学習指導要領改訂

英語で授業

文科省が08年12月22日高校学習指導要領を公表した。意見公募を経て09年3月までに告示、13年度から適用するという。中核となる国語は、論拠を明確にした討論や文章作りを行う。英語は基本的に授業を英語で進めると明記された(文法事項は日本語で行ってもよいとする)
東京新聞08年12月23日朝刊)

すでに小学校で進んでいる英語教育

今回の指導要領は、高校のものであるが、08年3月28日に告示された小学校学習指導要領では、新しく小学校5・6年で週1コマ「外国語活動」を実施することになっている。外国語活動においては、音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、コミュニケーション能力の素地を作ることを目標としている。高校で英語での授業を行おうというのも、そうした延長にあると言って良い。
以下は文科省のHP
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/gai.htm
文科省が行った07年度「公立小学校英語活動の実施状況調査」によれば全国の97.1パーセントの小学校で、英語活動を行っており、6年生が年間で15.9時間と、毎月1コマ強の割合で行われている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08031920/001.htm

英語必修化をもたらしたもの

小学校での英語必修化の背景には、必修化を望む保護者の存在がある。04年度の文科省の調査では公立小学生の保護者の70・7%が「英語を必修にすべきだ」と回答した。
タイや韓国など非英語圏アジア諸国でも90年代後半から小学校で英語を必修化する動きが広がっている。韓国は97年から3年生以上で必修化され、週2時間程度の授業を行っている。中国でも、01年から都市部を皮切りに必修化が進んでおり、小学校から高校まで一貫したカリキュラムで指導するなどしている。
http://www5.hokkaido-np.co.jp/motto/20060520/

乗り越えるべき課題

保護者の70%が「必修化」を望んだのに対して、教員は54%が反対。肯定する教員は37%にとどまった。英語の専門教育を受けていないことへの不安が背景にあるとみられる。日本児童英語教育学会によると、韓国では教員に200時間以上の研修を促すなど、英語指導の専門性を備えた教員による授業への移行を進めているという。
http://www5.hokkaido-np.co.jp/motto/20060520/
文科省では、小学校での英語授業は、学級担任とALT(外国語指導助手)がセットで行うことを予定している(前記文科省HP)。

学校間格差

 英語必修化を進めるのであれば、そのための予算も十分につける必要がある。小学校教員の英語研修、安価な教材開発が必須であろう。それがないと英語教育力の学校間格差が生じてしまう。それが、公立と私立での差となると、教育機会の均等が害されることになりかねない。現在格差社会が進行し、給食費が払えない(「払わない」という人もいるようだが)という家庭も多い。その中で、英語教材が高価だと、それが買えないという児童が出てしまう可能性がある。

英語の国語化論

初代文部大臣を務めた森有礼は、英語を国語化し、英語で学校教育を行おうとしたことで知られているが、これに反対したのが民権運動家でもある馬場辰猪であった。馬場は日本語を廃止して英語を国語化すれば、言語エリートと一般民衆の間に亀裂が生じ,階層的分裂が生じることを懸念していた。英語教育の進展が、教育を十分に受けられる者と受けられない者との格差を生まないように、配慮してほしいと思う。