派遣切り 雇用止め 寮からの追い出しを免れる法

正規雇用者 職を失うと家も失う

派遣労働者期間労働者も、勤務先から住居を提供されている。雇用を打ち切られると家も失うことになる。厚労省は08年12月15日から非正規労働者を対象に全国のハローワーク等で特別相談を行ったが、18日までの4日間に寄せられた相談は7500件を突破。このうち「失業によって寮から退去を迫られた」など住宅の確保に関するものが4939件あったという(東京新聞08年12月20日朝刊)。
中には、法的に争うことで退去を免れることができる場合がある。解雇無効等、雇用関係が終了してないと主張し争う方法と、借地借家法を主張し、明け渡しを拒絶する方法とがある。

解雇無効等の主張

雇用期間中の解雇は原則的にゆるされない。雇用期間中解雇された場合は、解雇無効を主張し、明け渡しも拒みうる

雇い止め

雇用期間が満了した時点で契約の更新を拒絶された場合でも(雇い止め)、労働契約法19条に規定がある。条文を見ても,どういう場合に雇止めが許されないかを規定しているが、非常にわかりにくい。分かりやすく言うと、次の場合,雇止めは認められないとされている。

  • 有期雇用が実質的に期限の定めのない労働契約と同視することができるような場合(例として、契約更新の際人事担当者との面接もなく、期間満了間際に上司から契約書に署名するように言われ、署名しているだけのような場合)
  • 労働者が雇用を継続されることに期待を有し、その期待に合理性が認められる場合(例:更新が何度もなされてきた場合)

 ただ、できる会社は契約書に、会社が契約を更新するかどうかを決める際、次の事実を考慮すべきものとし、極力雇い止めを裁判でも認めてもらえるよう、工夫している。
 ア 契約期間満了時の業務量
  (週●日、1日●時間勤務につくことを最低条件とする)
 イ 労働者の勤務成績、態度
 ウ 労働者の能力
 エ 法人の経営状況
 オ 従事している業務の進捗状況

事実上居座れることも

解雇、雇い止めを争っているうちに、時間はどんどん過ぎていく。訴訟で決着がつくまでは住んでいられる。

借地借家法を利用する

 もし住宅費を天引きされ、その住宅費が地域の家賃相場に近いものだった場合、社宅といえども、通常の借家と同じ扱いを受ける。その場合、会社としては、よほどの理由がないと立ち退きを求めることはできない。
 会社が契約した借家に住んでいる場合、家主は引き続き会社から賃料を回収できるのだから、退去を求める正当事由はないと争うことが可能である。
 賃貸借契約書に「従業員以外の者を住まわせた場合、従業員の地位を失ったものがなお居住している場合」を解除原因の一つとしているかもしれないが、従業員が解雇ないし雇い止めを争って訴訟をしているうちは、この条項を理由として、契約を解除するのは難しいだろう。
 会社が賃借して従業員に転貸している場合に、会社が賃貸借契約を解除することになるが、会社が払う賃料をそのまま従業員への転貸の賃料としている場合は、借地借家法上、正当事由なしとして解除が認められないだろう。その場合、会社としては、家主と交渉して、従業員と直接契約してもらうようにしてもらうのが現実的だろう。