国交省 無駄な道路つくりのからくり 根底から破綻

国交省は需要予測を訂正

国交省は08年11月26日、2030年には全国の自動車通行量が05年に比べ2.6%減少すると、従来の道路需要予測を下方修正。そのため道路整備の方針を示す中期道路計画の骨子を変更せざるを得なくなった。国交省は、従来、通行量は20年度まで増えるとしていたが、道路需要の低迷を自ら認める結果となった。
東京新聞08年11月27日朝刊参考)
将来の道路交通量に関する需要推計を最大で13%下方修正された。費用対効果(B/C)の計算方法も見直しており、同省は道路建設による経済効果は従来に比べて2、3割小さくなるとみている。こうした修正により、交通量が少なく、費用に比べ効果が低い道路建設に歯止めが掛かりそうだ。
(yahooニュース11月26日18時35分配信)

中期道路計画 10年で59兆円 最新データという大嘘

国交省の中期道路計画の骨子は、08年1月にも衆参両院に提出されている。そこでは、最新の交通センサス(交通量調査)をもとに算出した交通量予測から、10年間(平成20年度〜29年度)で59兆円を投じ1万4000キロを整備することが骨子とされていた。
ところがその「最新の」というのが大ウソだったのである。同計画骨子の基になった交通量データは平成11年にとられたものだったが、実は平成17年にとられたデータがあったのだ。そのため、民主党から、平成17年という最新データがあるのに、なんであえて平成11年の古いデータを使って計画骨子を作成したのか、と国交大臣に質問が浴びせられた。国交省が古いデータを使ったのは、平成17年の最新データをもとにしたのでは、交通量の伸び悩み、さらにはその減少傾向が明らかになってしまうからであった。
結局、政府も平成17年のデータを使って、道路計画を再検討することを約束せざるをえなくなってしまった。そして出た結果が上記報道の通りだったのである。
そもそもこの中期道路計画というのが曲者だ。かつては5ヶ年計画だったのが、10ヶ年計画になったのは、その分見直しの機会が減るからという、霞が関の役人らしい打算からだ。

B/Cが悪ければ無駄な公共投資

道路は社会資本として、経済的効果が問われる。たとえば100億円投下しても、100億円以上の経済効果があれば、経済的にはプラスの投資となる。国交省は「交通センサス」調査をもとに、交通量を将来推計し、そこから費用対効果(B/C)を計算する。国交省はB/Cが1.2以上の道路を建設するのだから無駄はない、という。
この数字には二つ問題がある。先進諸国ではB/C3以上が道路建設の目安と言われており、ハードルが低いのではないかという問題。そしてもう一つはB/Cの計算方法が国交省に都合よく作られているのではないかという問題である。
道路事業の費用対効果分析は国交省の道路局、都市・地域整備局が作った「費用便益分析マニュアル」(平成15 年8 月)に基づいてなされている。費用(Cost)は,道路建設費、土地収用にからむ補償費用等のイニシャルコストと、建設後の維持管理費の合計からなる。問題なのは効果(Benefit)のほうだ。道路の経済的効果というものは数字を作ろうと思えばいくらでも作れるものだからである。一応前記マニュアルでは、次の3点を効果としてあげている。
 走行時間短縮効果・・・目的地到着までにかかる時間が短くなる効果
 走行経費減少効果・・・走行経費(燃料油脂費、タイヤ・チューブ費、車両整備費、車両償却費等)が減少する効果
 交通事故減少効果・・・交通事故による社会的損失(人的・物的損害額、事故渋滞による損失額など)が減少する効果
そしてこの予測交通量を基に、3つの効果を金銭評価するのである。

B/Cが1.2以上という数字のからくり

このBが極めていい加減だ。たとえば今回の見直し以前に、業務で車を利用した場合の時間短縮効果は、余った時間に車をレンタカーとして貸し出せば、その分利益が得られると仮定して、そのレンタカー料金を積算していた。現実にそんなことをする会社がどこにあると言いたい。国交省もさすがに、今回この点を改訂し車の走行時間が減る分、車が長持ちするということで、その分を経済的効果として算定することになった。
業務以外で車を利用したことで、通勤時間が短縮され、浮いた時間も労働に充てると仮定し、その間に得られる収入を経済的効果としている。この点も非現実的と批判されてきたが、国交省はこの算定基準はそのまま維持するという!ありえない話はこれだけじゃない。この浮いた時間で得られる収入の計算方法である。何と、1人時給3000円と計算しているのである。サラリーマンが帰宅時関が早くなり、その空いた時間で仕事するとしたら、居酒屋やコンビニのアルバイトくらいしかない。それで時給3000円も稼げるかっていうのだ!せいぜい経済効果としては帰宅時間が早くなって、ビールを1缶余分に飲むかもしれないので、その缶ビール代がせいぜいだ。この点は前の通常国会川内博史議院からも質問があった個所であるが、この馬鹿算定方法は温存されたままだ。

道路は地方のためならず ストロー現象

ストロー現象」という言葉がある。道路が便利になれば、経済的に後進地域から先進地域に人口が移動し、結局地方は衰退するという現象である。東京湾アクアラインの開通後の木更津がいい例だ。一度木更津駅に降りてみるといい。駅前のそごうは、閉店し、趣味の教室などにテナント貸しされ、賃貸ビルとして細々生きている。駅前から木更津港に向かう商店街もシャッター商店街になっている。

そもそも交通量が増えることがいいのか

交通量が増えるから道路を造るのではなく、交通量を増やさないためにも道路を造らないというのも選択の一つではないか。仮に短期的に交通量を増えるにしても、それを前提に道路を造るのではなく、二酸化炭素の排出量を削減するためにも、自動車交通量を減らす政策が必要ではないか。

救命費用をBに入れるべきか

道路整備の遅れている自治体などは見直しに当たり、3項目以外に「医療機関への搬送時間短縮による救命率の向上」などの効果もB/Cの「B」に入れるよう求めてきた。東国原宮崎県知事などはその急先鋒である。しかし、数値化するのが困難ということで、見送られた。救命効果の存在を否定しないが、それを評価するなら、その代り、仕事が早く終わる時間分、時給3000円が得られるなどという馬鹿算定要素を廃止してほしい。