ローレンス・サマーズという人

ローレンス・サマーズ

ローレンス・サマーズ元財務長官(53)が、オバマにより次期国家経済会議(NEC)委員長に指名された。
両親ともに経済学者であり、叔父の中にはポール・サミュエルソンケネス・アローノーベル経済学賞受賞者が二人もいる。16歳でマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学、MIT卒業後ハーバード大学大学院に進み、経済学博士号を取った後、28歳の若さでハーバード大学史上最年少の教授となった。91年には世界銀行チーフエコノミスト(世銀のナンバー2)に就任。クリントン政権下で、93年に財務次官、95年に財務副長官、99年7月に財務長官に就任した。01年にブッシュJr政権成立に伴い、ハーバード大学に復帰、同大学学長に復帰した。

傲慢不遜というキャラクター

財務長官時代「サマーズに謙そんを求めるのは、マドンナに貞操を期待するようなもの」と評されたように、サマーズには傲岸不遜といった評がついてまわる。
ハーバード大学学長時代、女性蔑視発言で学長の地位を追われた。また世銀チーフエコノミストになってからも、公害が起きても損害賠償額が少なくて済むから、公害型産業は開発途上国に移したほうがいいなどといい、猛反発された。
NECは大統領の経済顧問のような位置づけであり、表の顔とはならない。ただルービンがNEC委員長からFRB議長に移ったように、将来のFRB議長含みでの就任ととらえる向きもあるようだ。

なぜサマーズか

サマーズの上司がロバート・ルービン財務長官だが、ルービンはグリーンスパンFRB長官と二人三脚で、クリントン政権下、米国の自由市場経済を推進、米国経済の繁栄時代を築いた。
サマーズのこのような経歴からして、どうして「大きな政府」を掲げるオバマがサマーズをNEC委員長に指名したのかといぶかる声もあるようだ。
ただサマーズは次のようなコメントを発表しており、やはりオバマの考えと近いのではないか。
容易な貸付からの富と所得の増加は一部の幸運な人達に集中し、またその利益も一時的なものでしかなかった(注1)。振り返ってみると、2006年のアメリカ企業の利益の6割が金融企業のものであったということは、そしてそれに関連して人口の上位1%の所得シェアが2倍になったということは、何かがおかしいということのしるしであったのだ。
よって、我々は金融でのリスク・テーキングを奨励する税制上の誘引を改め、レバレッジを規制し、利益は私的なものだが損失は社会的なものになるという醜悪な組み合わせにつながった政策を改正しなければならない。このことが、より地に足がつき、より多くの人が恩恵を得る繁栄の可能性へとつながる。より根本的なことは、短期的および長期的にも、将来の繁栄はより多くの人が恩恵を得るような政策を実現しなければならないということだ(注2)。需要を助けるのに最も効果的な政策は、低所得のためや最近所得が減少して困窮している家計を助けるものだ。最近の事例は、自己責任ではなしに人々は貧窮したり健康保険を失ったりするのだと教えてくれている。故に、雇用主によらない、基本的な健康保険と年金の確立が必要なのだ(注3)。

(注1)米国ヘッジファンドは借金で投資するというレバレッジ手法で、大きな富を築いたが、所詮はバクチ経済であり、運がよければその恩恵に属するが、一時的な繁栄にすぎない。
(注2)高給をもらっていた金融業界の連中が破綻したことで、その余波で社会が経済的損失を負わなければならないということに対する批判。
(注3)ビッグスリー等の大手企業に勤める人間は企業が提供する手厚い健康保険、年金の恩恵を受けるが、そうでない労働者層は十分な健康保険、年金を受けられないでいる。サマーズは企業別の社会保険制度から、国民全体をカバーする社会保険制度に切り替えようと思っているのではないか。そうすれば、ビッグスリーはレガシーコストから自由になり、収益力も上がってくる。