電気自動車の登場で始まる、トヨタの落日、パナソニックの夜明け

電気自動車が自動車産業を変える

電気自動車は構造が単純だ。だから優秀な電池さえあれば小さな工場でも電気自動車を作ることはできる。アメリカの起業家グループが第二のトヨタになることは十分可能だし、新興国でも自動車産業ラッシュが起きるかもしれない。その際鍵を握っているのがパナソニックだ。パナソニックは未来のインテルになるかもしれない。
米政府、オバマにこのような認識があるとするなら、ビッグスリーは見捨てられ、次世代の起業家に自動車産業を任せることになるだろう。

電気自動車は構造が単純

ガソリンエンジンなどの内燃機関を動力とする自動車と異なり、電気自動車は必ずしも変速機が必要ではない。また原動機の始動に外部からの動力も必要としない。ゆえに電池式電気自動車は構造が比較的単純であり、自動車の黎明期から今日に至るまで遊園地の遊具をはじめ、作業環境と騒音に対する配慮が必要な倉庫内等で使用されるフォークリフトや、ゴルフ場のゴルフカートに多く使用されてきた。
wikipediaより)

すでに新興企業が電気自動車を販売

米Tesla Motors社は08年3月17日、オール電気のスポーツカー「Tesla Roadster」の商用生産を開始した。現在、同社は1週間に1〜2台のペースで生産しているが、徐々に生産台数を増やしていき、09年初頭までに月産100台前後を目指している。
9万8000ドルと高額だが、これまでに900人以上がTesla Roadsterを予約しており、その中には俳優のGeorge Clooney氏、Dustin Hoffman氏、Arnold Schwarzeneggerカリフォルニア州知事などの著名人も含まれている。わずか4秒間で時速60マイル(約97km)まで加速するツーシーターのスポーツカーだ。
こうした新興企業が電気自動車を販売出来るのも。電器自動車の構造が単純だからだ。
まだこうした後発メーカーは小規模だし、資本も十分ではない。しかし、こうした企業に投資する人が増えたり、国が支援をしたりすれば、急成長する可能性がある。
後発企業も、資産さえあれば、先行企業に追いつくのも簡単だ。中国、台湾、インドといった新興国は、今後米国に代わって世界経済のエンジン役になることを期待されている。こうした国の国内で電気自動車の生産が進む可能性もあるし、こうした国が他国企業に資金供給し、資金供給を受けた企業が電気自動車を販売する可能性もある。

パナソニックは電池業界のインテルになりうる

パナソニックは先日、三洋電機を子会社にした。三洋電機は家電製品ではパッとした業績を上げていないが、リチウムイオン電池市場で世界首位のシェアを誇っている。三洋は08年5月には、10年にも独フォルクスワーゲンリチウムイオン電池を供給・販売することを決めた。
中長期的には、石油価格の高騰は避けられないとみられている。これは価格面で競争力の劣っていた電気自動車にとっては大きな追い風になる。電気自動車の心臓部は電池である。そのため電池を制する者は、電気自動車を制するのである。とすると、三洋電機を買収したパナソニックは電気自動車に進出する大きな手掛かりを得たことになる。もっともパナソニックにはもう一つの道がある。それは第二のインテルになる道である。
インテルは世界最大の半導体メーカーであり、PCの心臓部であるCPU生産については、世界最高水準の技術を持っている。現在パソコン本体は、CPUがあれば、組み立てられるようになっている。その心臓部のCPUが同じなら、性能はほとんど変わらないことになる。そのため、パソコン製造においては、他社に対して技術力で優位に立つことが難しくなり、価格競争が激化する。そのためIBMもパソコン本体を製造販売しても利益が上がらないと悟り、パソコン製造部門を中国企業レノボに売却してしまった。
今やパソコン製造で高収益を上げるのは難しく、これらPC製造業者にCPUを提供しているインテルの一人勝ちといった感じです。そして、パソコン事業を自動車製造業に、CPUをリチウム電池に、インテルパナソニックに置き換えれば、将来の自動車産業の形を想像できるのではないか。

ビッグスリーは破綻するしかない

ビッグスリーが、米国内での自動車販売不振のため、資金繰りがつかず、政府に財政支援を求めている。11月18〜19日、上下両院の公聴会ビッグスリーの代表者が呼ばれた。3社の首脳から明確な再建計画が示されず、共和党議員からの批判が噴出し、結局財政支援は先送りになった。ビッグスリー各社の経営が苦しくなったのは、最近の金融恐慌とそれに引き続いて起きた国内消費の低迷もあるが、元々は企業努力の不足が原因とされてる。私も、議会公聴会を見ててびっくりしたのだが、ある議員が、ビッグスリーがstupidな経営(愚かな経営)をそのまま続ければ、また破綻するではないかと詰問していた。ビッグスリーの経営者は、彼らの経営が「stupid」であるとまで言われ、彼らもこう面と向かって言われたこと自体はショックだっただろう。しかし、こうした認識は米国民の多くが持っており、ビッグスリーは退場すべきだという意見も多いようだ。
米国産業の将来の発展を考えれば、ビッグスリーは倒産させて、そのノウハウを別の新興企業が買い取り、新興企業では電気自動車製造に資本を集中させ、電気自動車で世界のトップを目指させるということのほうが良策かもしれない。

自動車にもガラパゴス化の可能性

ガラパゴス化という言葉が最近よく使われる。日本の工業製品は、確かによく作りこんであるし、高性能だったり、多機能だったりするが、いかんせん価格が高い。そのため新興国の消費者からすると、高性能、多機能はいいから、もっと値段は安くならないの、ということになる。携帯電話がその典型だろう。日本の携帯電話メーカーの技術力は優秀だが、無駄に優秀なのだ。他の家電も同様、日本では売れるかもしれないが、海を渡れば無用の長物でしかないものが多い。ガラパゴス島の中の生物が外界と遮断され、島内だけの環境で育ってきたのと非常に似ているのである。
確かに先行する自動車メーカーは、高度な技術力があるが、新興国消費者からすると無駄と言えるものがおおいのではなかろうか。
電気自動車時代を迎え、既存自動車メーカーの技術的優位が弱まってくると、「車なんか走ればいいじゃん。安ければもっといいじゃん。」みたいな消費者が増え、DELLやHPみたいな自動車メーカーが世界市場で上位を占めるかもしれない。杞憂であってくれればいいのだが。

補遺・パナソニック三洋電機子会社化はトヨタに利益か

 トヨタは今のハイブリッド車にはニッケル水素電池を使っているが、より高出力で小型のリチウムイオン電池を使いかった。しかし、発火性という安全面での問題が解決されず、実現にいたらなかったという。
 トヨタパナソニックは共同出資して、ハイブリッド車や電気自動車用のバッテリー会社「パナソニックEVエナジー(PEVE)」を設立している。PEVEへの出資比率は、設立当初はパナソニックグループ60%、トヨタ40%だったが、電池の生産能力を臨機応変に調整したいというトヨタ側の要望から、05年10月に出資比率が逆転している。
 ネット上の意見を比べて見るに、トヨタはPEVEを通じて、三洋のリチウムイオン電池の技術を自社に導入できるかもしれないという、トヨタ有利説がある一方で、パナソニックトヨタに対する発言力を増したという、パナソニック有利説もある。
 三洋電池は、VW、ホンダ、フォードにも電池を供給しており、これらの顧客基盤を武器に、パナソニックトヨタに対する発言力が増すと考えるべきではないか。