破綻した沖縄の信販会社オークス 配当率はたったの0.49%! (注)訂正あり

注意

 オークスから次のような連絡が来た。3月24日までに過払金返還請求をする必要がある。オークスとの取引のある人は急げ、急げ。

  • 過払金返還の債権申出期限は「平成22年3月24日」となっているため,期限までに債権の申出がなかった場合は,過払金の返還請求権が失われる。
  • 平成21年3月30日開催の株主総会にて解散を決議し,平成22年3月24日を債権申出期限とする精算手続きに着手しているため,開始決定日の平成20年7月31日〜解散日の平成21年3月30日の間に受領した利息にかかる共益債権に関しても,上記期限までに申し出がないと失権する。
  • 債権申出には所定の書式でのみ受け付ける。

オークスの精算人上原教文あてに電話して所定の用紙を送ってもらうこと(098-861-1164、那覇市松山2-3-10 2階)

注意(09年2月18日加筆)

 09年2月6日付でオークスの監督委員を務める宮國英男弁護士が、裁判所宛意見書を提出、300万円超部分は0.5%配当だが、10万円までは全額支給、10万円から300万円までの部分は1割が配当される。そのため200万円の過払い金債権を持っている人は29万円が配当されることになる。
 しかも、裁判所の最終決定は、監督委員の3月か4月ころ出るが、その決定確定後1年以内に限り、まだ裁判所に債権を届け出ていない人も上記基準で過払い金を払ってもらえる。弁護士に依頼しなくても大丈夫!098-871-0094(平日:9:00〜17:50)に電話すれば請求方法を教えてくれる。

オークス民事再生

 沖縄県内最大手の信販会社、オークスが08年7月15日の民事再生手続を申し立て、裁判所もこれを認め、再生手続きが開始された。民事再生手続とは、債務超過で破たんした企業が、裁判所に申立てをし、裁判所の監督下、債権者の過半額の同意も得て、借金を一部免除してもらい、残った債務についても長期分割にしてもらうことで、事業を継続しようというものである。
 オークスのクレジット会員は約24万人で、貸し金利用者は約4万5000人。過払い金は約250億円に上るとみられていた。しかし、過払い金請求権をもっていても(オークスに利息制限法超過の利息を長年払い続けてきた人は、同社に対し過払い金請求を持っている)、裁判所に債権を届け出ないでいると、過払い金債権は結局消えてしまう。
 色めきたったのは、弁護士業界、司法書士業界である。某大手事務所はホームページで「オークス相談センター」なるものを開設、地元司法書士会も「オークス民事再生問題対策会議」なるものを立ち上げ、相談会を開き、それぞれが集客を図り、債権届を呼びかけた。
しかし、フタをあけたところ、満足な支払を受けるのは銀行だけで、過払い金債権者も含め一般債権者への配当率はわずか0・49%程度。つまり10万円の過払い金債権を持っている人も、490円しか配当を貰えないのだ。というのも、オークスが貸付金の全部を銀行借入の担保としていたからだった(琉球新報の08年10月30日付記事)。

それは05年実施の債権譲渡特例法のためだった

 3年以上前であれば、こんな結果にはならなかっただろう。これは、改正債権譲渡特例法が05年から実施され、企業が自社が持つ債権全部を銀行の担保に入れることができるようになったからだ。それ以前にも債権を担保に融資を受けることは可能だった。しかしオークスのような信販会社の場合、その資産の中心をなす貸金債権、立替金債権は、時々刻々、新しく発生し、返済により消滅する。だから今ある債権を担保に入れても、債権の新陳代謝が激しいため、効果がない。そのため、現在ある債権だけでなく、将来発生する債権も、いっしょくたに担保に入れることが必要だ。これを集合債権譲渡担保という。法改正前も、集合債権譲渡担保をしようと思えば、できたのだが、これを第三者に対抗する方法がなかった。改正法によって、こうした集合債権譲渡担保も登記できることになり、登記をすれば第三者に対抗できることになったのである。
 こうした手法はもともと米国で発達した。企業が融資の担保に、売掛金であるとか、貸付金であるとかを銀行に譲渡、銀行がこれを証券化して、販売しているのだ(米国というのは何でも証券化してしまうんですね)。
(注)04年11月「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」の一部が改正された。改正法によって、法人がする債権の譲渡につき、債務者が特定していない将来債権の譲渡についても、登記によって第三者に対する対抗要件を備えることを可能とする制度が導入された。改正前は、譲渡債権の債務者が登記される必要があったため、債務者が特定していない将来債権を譲渡しても登記をすることができなかったが、改正により、債務者不特定の将来債権も登記の対象とされることになった。〜法的に正確に書くとこうなります。

ほかにもあった集合債権譲渡の事例

 私もある会社の破産事件の依頼を受けた時に、集合債権譲渡の実例に遭遇した。依頼会社は内装会社だった。内装資材を購入していたが、支払いが遅れ遅れのため、資材販売会社から集合譲渡担保を求められたのである。しかし、その会社が営業を閉じる直前に譲渡担保を受け、登記もしたため、破産管財人に否認されてしまった。
 破産が確実になった会社が、破たん直前に一部の債権者を優遇し、その債権者だけに一括返済したり、担保を提供することがよくある。しかし、こうしたことを認めてしまうと、大口債権者だけがいい思いをして、他の小口債権者はその債権のほとんどが無価値になってしまい、不公平になる。だからそういった会社が破産すると、裁判所から選任された破産管財人がそうした弁済行為、担保提供行為を取り消し、弁済、担保提供で失われた財産をとりもどし、債権者全部で分けるようにしているのだ。

だからといって諦める必要はない。

 オークスの例は、銀行借入が多すぎたのだろう。たとえば、貸付金が1000億円あり、銀行借入が500億円、一般債権が1000億円だとすると、銀行が貸付金の全部を担保にとっても、500億円は余るからである(ここでは説明の便宜上、貸し倒れ引当のことは無視する)。
 私のやっている法律事務所も債務整理を専門にやっているが、最近は多くの会社が、業績の悪さを理由に、過払い金の3割をカットしてくれとか、5割をカットしてくれとか、ひどいところになると1割の額を半年後に払うから勘弁してくれと言ってくる。そのため、その会社のHPのIR情報を見たり、帝国データバンクから企業情報を取り寄せたり、株価の推移を見たりと、弁護士とは言えないようなことまでせざるを得なくなっている。このことについては後日ブログで紹介したい。