自動車産業では非正規雇用者が大量失業 ネットカフェ難民に変わっていく可能性。 

国内自動車メーカーも続々人員削減

自動車各社とも対米国輸出が激減し、期間従業員派遣社員について、人員削減を進めている。具体的には新規採用はもちろん、契約の更新もしないため、契約期間、派遣期間が切れた人間から会社を去っていくことになる(契約期間を更新されないことを雇い止めという)。
トヨタは08年6月に期間従業員の新規採用を凍結、契約更新もなくした。3月には約8800人いた期間従業員が 10月には6000人、09年3月には3000人にまで減る予定だ。
日産自動車の同年11月14日発表によると、国内工場に今約2000人在籍する派遣社員が、11月末までに約1000人、12月末までに約500人に減るという。

期間工期間従業員)、派遣社員

期間工(会社は語感が悪いとして期間従業員と呼んでいる)は契約社員とも言い換えることができる。正社員と違って、一定期間を定めて雇用されている従業員である。
この契約期間について、労働契約は3年を越えてはならないとしている。もし3年を超えてそのまま雇用を続けていると、従業員に会社にそのまま残れるという期待感を与えてしまい、裁判上もそうした場合、正社員と同様首を簡単に切れなくなるため、会社が期間工を最長2年11か月という期間で雇用し、いっさい期間を更新しないことを常としている。
労働者派遣法が04年に改正され、製造業についても派遣労働が認められるようになった。そして派遣可能期間は1年以上3年(かつては1年)以内とされ、3年以上同一の職場で派遣社員を働かせる場合はその派遣社員を雇用するよう努めなければならないとしている。このため企業が派遣労働を受けるときは、派遣期間が最長2年11月となっていることが多いのはこのためである。しかしこれにも抜け道がある。労働者派遣法でいうクーリング期間がそれだ。いったん派遣を中止しても、3ヶ月後にはまた再度派遣労働を開始できるというのだ。
「3年派遣受入 →3ヶ月中止 → 更に3年派遣受入 → 3ヶ月中止 → また更に3年派遣受入が可能」という形をとれば、延々と派遣扱することができるのである。

景気の調整弁

期間工派遣労働者という非正規労働者は、景気の調整弁と言われている。景気が悪くなるとこうした労働者が先に切られ、その犠牲で正社員の雇用が保たれているのである。
労働組合は正社員だけから構成され、こうした非正規労働者は組合の助けも得られない。トヨタ自動車では、06年1月、非正規労働者も加入させる全トヨタ労働組合が新しく設立されたが、少数派であり、会社経営に影響力を及ぼすには至っていない。こうした新労組が、会社を去った期間工に対し就職支援を行っているが、こうしたことは本来トヨタ自動車が行うべきではないのか。

2009年問題

全トヨタ労働組合の若月委員長はトヨタには2009年問題があるのだという。それは来春、景気のいいときに、雇用期間が最長2年11か月の契約を交わしている派遣社員が一斉に契約切れを迎えるというのだ。その人数も「数千人に及ぶはず」という。景気が回復しないと、それらの派遣社員もまた路頭に迷うことになる。
(J−CASTニュース2008/11/ 4)
http://www.j-cast.com/2008/11/04029658.html
これには労働者派遣法の改正も影響している。07年に派遣受け入れ期間が3年間に延長され、このためこの時期に派遣期間が3年に設定された派遣労働者が多数おり、09年には派遣契約が一斉に切れるのである。  

雇い止めされた期間工派遣労働者ワーキングプア

期間工は、派遣労働者は会社が用意した寮に入っている。こうした期間工派遣労働者が一定の人気があったのは、住居が保障されるからなのである。しかし、こうしたメリットは会社を辞めると一転デメリットに変わる。会社を追い出されることはすなわち住居を追い出されることを意味するからである。こうした失業者はネットカフェ難民にならざるを得ない。

ネットカフェ難民 そして飢餓難民へ

厚労省の調査ではネットカフェで寝泊まりする人は全国に推計約5400人いるという。
小泉さんが目指した自由経済の国アメリカは、大変悲惨なことになっている。慢性的飢餓状態にある人々が増え、すでに食糧配給制までもが始まっている。全人口の1割近くの2560万人が配給プログラムに依存しているという。今日の米国は明日の日本になりうるかもしれない。政府が無策でいる限り、日本でも食糧配給制が始まるだろう。

現在ある救済プログラム

政府は来年度、公共職業安定訓練を受ける人に月15万円の生活費や、敷金などの初期費用の融資を始める。
東京都は08年度から「住居喪失不安定就労者サポート事業」を行っている。都内に半年以上住むネットカフェ難民らを対象に就労相談を受け付け、最大60万円の住宅・生活資金を無利子で貸し付け、物件や保証会社も紹介する。08年11月現在約700人が相談し、200人が住まい歩を確保した。だが相談継続中が500人と、大半がネットカフェに寝泊まりする状況から脱していない。

阪高裁、最高裁不当判決

大阪の公園生活者山内勇志さん。98〜99年ごろ、パチンコ店寮から扇町公園に移り住み、00年ごろからは公園内に組み立てたテントで生活を開始。04年3月、テントがある場所を住所とする転居届を出したが、北区役所は「公園の適正な利用を妨げる」として不受理とした。山内さんはこの処分を不服として05年3月に大阪地裁に提訴した。
06年1月の大阪地裁判決は、公園を住所と認定、区の不受理処分を取り消した。07年1月23日、大阪高裁は「公園内のテントは住所と認めることはできない」として、逆転敗訴判決を言い渡した(田中壮太裁判長)。そしてこの判決は08年10月3日、上告棄却により判決が確定したのである。
(07年11月23日朝日新聞
路上生活者の困窮を救うには生活保護しかないが、生活保護は住所がないと受けられない。路上生活者が生活保護を受けられなくても仕方がない、という判決を最高裁は認めてしまったのだ。私はこの判決は不当だと思う。

縦割り行政も問題

先日リプラスの倒産で、その存続危機が危ぶまれるとして報道されて有名になった「自立生活サポートセンター・もやい」の代表の稲葉さんは次のようにいう。「労働と住居は暮らしの両輪だが、現状では別々の行政機関が担当している。就労対策と住宅施策を福祉の視点で連携させ、担当する役所を再編する必要がある。」貴重な指摘だと思う。
(08年11月17日東京新聞朝刊)