いい話があるんだけど聞きに来ない といったマルチ勧誘は違法です 

マルチ業者と訪問販売業者が3か月の一部業務停止

マルチ業者の「フィールズ」(品川区東五反田)と訪問販売業者の「マイクロシステムテクノロジー」(中央区日本橋)の2社がそれぞれ新規販売などの一部業務について3か月の業務停止命令を受けた。
フ社の代表取締役はマ社の株主の一人で、マ社はフ社の組織を通じて競馬投資ソフトを売っていたというから、両社は二人三脚で商売をしていたことになる。

被害者は若者

フ社に対する相談件数は141件、被害者の平均年齢は22歳、平均被害額は約53万円だった。マ社については、それぞれが41件、22歳、約103万円という数字になる。
両社とも学生、フリーターをターゲットにしていたという。フ社は電話や電子メールで、マルチの勧誘だとは明かさないまま、「いい話があるんだけど、聞きにこない。」、「よいバイトがあるんだけど一緒にやろう。」などとだけ言って、勧誘現場に呼び出していた。
マルチ(ネットワークビジネスも同じだが)の人は、友人や知人を、マルチとは言わずに誘い出し、会ってようやく商品の話や、マルチの話を切り出すことが多い。中には「久しぶりに会いたいんだけど、どう」なんて美人の同級生に言われて行ってみたら、マルチの勧誘だったなどという話もよく聞く話だ。
しかし、こうした勧誘は特定商取引法(マルチや訪問販売商法等を規制する法律)第33条の2が禁じている販売目的の隠匿にあたる。
08年2月20日には経産省がマルチ大手のニューウェイズに対して3か月の一部業務停止処分をしているが、そのときもこの販売目的隠匿が処分理由の一つになっていた。

なんで若者が被害の対象になるのか

まず20歳そこそこの若者に、平気でこうした高額商品についてクレジットを組ませている2流、3流の信販会社が必ずいる。こういう怪しげな商品のクレジットでは、こうした常連の信販会社の名前が必ず出てくる。私は破産事件を多く処理してきたが、そうした仕事の中で顧客の通帳を見る機会が多い。通帳に●社とか■社の引き落としがあると、だいたいマルチ、訪問販売、エステ、補正下着等の支払いだったりする。
●社、■社の人、反省してくださいね!
こうしたマルチの説明会の多くは、あたかも新興宗教の集まりのようだ。参加者はマルチの会員が7割、カモが3割といったような構成だから、司会者の呼びかけに応じ、マルチ信者が、とにかくオーバーアクションで笑い、声援を送り、歓声を上げる。いわば集団催眠状態みたいな雰囲気がそこにはできあがっている。成功者と称する人が壇上に登場し、自分がいかにもうかったか、しかもそれを自分はいかに楽しみながら達成したか、いかに自分が充実感、幸福観を持っているを笑顔で語るのである。そして司会者は「友人を誘うだけで簡単にもうかる」「扱っている商品がいかに素晴らしいか、自分でもいいと思う商品を人に勧めるだけ、その商品を相手が喜んで使って、そして自分はお金が手に入る、こんな素晴らしいワクワクする体験が得られるんですよ」などということを、これまた満面の笑顔で語りかける。
参加している人間が「一緒にやろうよ」「やってて本当に楽しいよ」などと語りかけてくる。そして説明会のあと、マルチ信者にファミレスに連れて行かれ、勧誘される。すると、偶然を装って「すごい人」が現れる。その「すごい人」が、「すごい」成功談を、「すごい」笑顔で聞かせてくれるのだ。その「すごい人」は毎回偶然を装ってはファミレスを訪れ「すごい話」をしているので、その話はまさに立て板に水。
若者はこういう雰囲気に弱い。だからこうした組織は若者を誘うのである。

フ社、マ社のほかの違反行為

フィールズ株式会社

  • 「チャガはガンに効果があると立証された。」、「会員にお年寄りがいて、お茶を飲んでいるだけで勝手にお金が入ってくる。」、「1ヶ月で150万円から200万円くらい稼いだ。」などと虚偽の事実を述べて勧誘する。
  • 「最初に1、2人紹介してくれれば、ポイントだけでもお金がどんどん入ってくる。」、「38万円もするけど2〜3ヶ月で返せるから」などと利益が出ることがあたかも確実であるような判断を提供して勧誘する。
  • 連鎖販売取引のデメリットやローン契約の場合の返済総額などの重要な事実を告げないまま勧誘する。

株式会社マイクロシステムテクノロジー

  • 「スゲーいいものがある。」、「簡単に儲かる方法がある。」などと言い、商品の販売であることを告げずに事務所に勧誘する。
  • 商品の説明にあたり、「98.2%の確率で勝てる。」、「ローンを組んでも儲かるから大丈夫。」などと虚偽の説明を行う。
  • 夜間長時間に渡り勧誘を行ったり、解約を申し出た消費者に対し迷惑を覚えさせるような方法で撤回するよう説得する。
  • 消費者が購入する経済的余裕がないことを知りながら、不適当と思われる勧誘を行う。

マルチはもうからない。

今友人にマルチに誘われている人は、マルチで売ってる商品を、スーパーやデパートに置いたら、放っておいても売れる商品かを、よく考えてみてほしい。「値段の割に内容が、、」という商品だったり、「いい商品なんだけど値段がね、、」といった商品だったりしないか、よく考えてほしい。もしそうだとしたら「普通の方法では売れない。だからマルチに乗っけて売るのかも。」という考えにたどりつかないだろうか。
ネットワークビジネスにはお金はかからないというが、本当にどうかを考えてほしい。「商品の良さを知るために自分でも商品を買って日常で使わなければ」などと言われて馬鹿高い商品を買わされていないか。中には「成績を上げて上位ランクに行くと、商品が売れた場合入ってくる手数料の率がアップする」からと言われ、自分がほしくもないのに同じ商品を何個も買って、目標を達成したとか、結局収入は増えなかったとか、そういうことがないかどうか。友人に会いに行って、結局食事をおごったりして金がかかるし、説明会に行けばそこでも金がかかる。そんなことはないだろうか。