金融サミットがいよいよ開催

金融サミット開催

金融サミットが、14日夕(日本時間15日朝)ワシントンで、先進国7カ国に新興国12カ国およびEUを加えたメンバーにより行われる。15日午後(16日未明)には、議長国のブッシュ大統領が議長声明を発表する。
この20カ国のGDPの合計は全世界のGDPの9割を占める。

何が話し合われ、何が決まるのか

10月18日キャンプデービッドで、ブッシュ米大統領、EU議長国のサルコジ仏大統領、欧州委員会バローゾ委員長との間で会談が行われ、新興国も含めた形での金融サミットを開くことが決まった。欧州には、米国型の市場万能主義を見直し、IMFに金融に対する国際的な規制・監視機能を持たせようと意向があった。
その後開催されたASEAMで、サルコジ等欧州指導者は、ブレトンウッズ体制についての変革を求め、さらには、米ドルのみが基軸通貨となっていることについても異議を唱え、同会議は欧州が中国等アジア各国に米国につくより自分たちにつくよう同調を求める場となった。

金融市場に対する国際的監視・規制体制が意味するもの

これまで、金融市場を支配していたのはアメリカである。アメリカが全世界から投資を集め、これを金融商品に仕立て、全世界に輸出する。米証券会社、投資銀行ヘッジファンドはその先兵だ。金融市場の規制・監視イコール米国金融業界への規制・監視となる。特にこれまで自由放任状態だった、格付け機関ヘッジファンドへの規制が必須となる。ブッシュはサルコジに押し込まれ、つい金融サミット開催をOKしてしまったが、今となっては後悔していることだろう。
ブッシュは13日の記者会見で「金融セクターの改革は不可欠だが、今日の問題の長期的な解決策は持続可能な経済成長にある」「答えは新たなシステムを作り出すことにはない。われわれが直面している問題を解決し、必要な改革を行い、世界中の人々に繁栄と希望をもたらしてきた自由市場の原則を推進していくことが答えだ」と発言。金融大国アメリカの虚像にしがみついている。

ある論評

天木直人氏が、ベイルートのデイリースター紙の論評記事を掲載している。
今回の金融サミットの問題点を的確に指摘しているので引用したい。
今度のサミットは嫌がるブッシュの尻をたたいてEU議長のフランス大統領サルコジがその任期が終わる前に、強引に開かせた会議だ。
しかし、様々な思惑がぶつかり合う会議になる。いまや世界経済の共同管理者となりつつある中国、新しい国際金融制度の創設に影響力を発揮したいEU、そして、自分たちに何の責任もないのに、いきなり世界経済の混乱に巻き込まれた新興国の怒り。
実際のところ新興国の怒りはすさまじい。ブラジルのパトリオタ駐米大使などは、「今度のサミットはG8が決めてきた世界経済システムについて、すべての参加国が平等に発言する会議になる」などと挑発的な発言をしている。
フランスは早々と金融サミットで採択される決議案のとりまとめを急いでいる。それは格付け会社の監視強化、会計基準の統一、そしてIMFの役割の強化である

欧州は新興国を引き入れることで米国の発言権を減殺したいのだろうが、当然米国はこれに反対する。規制強化についても、オバマならともかくブッシュは断じて受け入れないであろう。サルコジは「第二次世界大戦以降ドルは唯一の国際通貨だったが、現在ではそうではないことを、あすワシントンに向かい(金融サミットで)はっきりいってやる」「1945年に真実だったことが今日でも真実とは言えない」と述べ、ブレイトンウッズ体制そのものの変革を主張しており、波乱は必至だ。
中国は11月9日56兆円の景気対策を発表、金融サミットでの発言権を強めることに成功した。麻生首相のように政府の方針をぺらぺらしゃべらず、キャスチングボードを握るべく、カードを切る時期を虎視眈々と狙っている。日本外交は逆立ちしても、中国外交に勝てないことを目の当たりにする思いだ。
とにかく、これだけ関係国の思惑が対立する中で、何を決めることができるだろうか。

麻生首相の対応は

麻生首相は、新興国支援を強化するため、IMFに最大1000億ドル相当を貸し付ける用意があることを正式表明するほか、ドル基軸通貨体制を支える必要性も呼びかける、という。麻生が1000億ドル出すといえば、世界が喜ぶと考えていたとしたら大間違いだ。現在IMF資金は3200億ドル。米国が547億ドル、17.09%割当を受けており、他を圧しており、これが米国がIMFを支配する力となっている。IMFは重要事項の決議には85%以上で可決する必要がある。米国1国が反対すれば、いかなる重要決議ができないのがIMFなのである。もし日本は既に196億ドル割り当てられており、1000億ドルも出せば、米国を抜いてダントツの最大出資国になってしまうし、米国は拒否権(VETO)を失う。米国がうんと言う訳ないと思うのし、欧州もうんと言わないだろう。IMF出資でない形での供出を求められるのではないか。
日本が米ドル基軸通貨を支持するのは当然だ、海外保有米国債のうち、日本政府はその3分の1強の7120億ドル(約85兆円)の米国債保有している。発行残高に対する比率は、約16%になる。第2位の中国の1940億ドル(約23兆円)と比べても断トツだ。これは、政府・日銀による円売りドル買いの為替介入の積み重ねの結果でもある。もしドルが基軸通貨の地位を失えば米ドルは暴落し、米国債の価値も激減する。だから日本は米ドルの基軸通貨を支持せざるを得ない。債務額が限度額を超えると、債務者のほうが債権者よりも立場が強くなるのは、どの社会でも共通の真実だ。
麻生首相は、IMFの金融市場の監督機能や金融・経済危機の早期警戒機能向上に加えること、国際金融の枠組みに中国、ブラジルなど新興国の主張を取り込むことも提案。具体的には経済実態に比べ欧州などの比重が高いIMF世界銀行投票権や発言権を見直し、先進七カ国の金融当局などで構成する金融安定化フォーラム(FSF)に新興国も加える。新たな国際監督機関を創設したり、IMFに監督機能を持たせるのではなく、FSFを「上位機関」と位置付けIMFと協力を強化するのだという。先進国と新興国の橋渡し役になることで、日本の存在感を高めたい考えだという。
考えとしては立派だが、新興国の発言権を強くすることで、日本の発言権が弱くなることはどう考えているのだろうか。中国がIMFへの出資を望んだらどうするのだろうか。それこそ中国外交への敗北ではないか。

麻生の狙いは日本での2回目のサミット?

麻生首相は、今回の金融サミットで決着はつかないと考え、自分が議長国であるうちに、金融危機を話し合うためのサミットを日本で開きたいという考えもあるらしい。
それを実現すれば、麻生のプライドも満足させられ、選挙にも有利になると考えているのかもしれないが、再度日本でサミットをやるとなると、世界に向けてさらなる財政的貢献をしなければならない。そんなことは願い下げだ。