東京信用保証協会 代位弁済前年比48%増

東京保証協会 代位弁済前年比48%増

東京信用保証協会は10月17日、2008年上半期(4〜9月)の事業概況を発表した。
信用保証協会は、中小企業が銀行から融資を受ける際に、借主から依頼を受けて融資金の保証をつとめる、特殊法人である。借主が支払えなくなると、同協会が保証人として、借主に代わって銀行に借金を支払う。その代り以後は同協会が借主に対して債権の回収を行うことになる。この借主に代わって銀行に借金を返済することを「代位弁済」あるいは「代弁」という。
この代位弁済が、金額ベースで前年同期比48.8%増と激増した。ことに不動産業が485%増と、伸び率が突出している。しかし卸売業も39%増、製造業も47%増、サービス業も58%増と、全体的にも増えている。

信用保証協会 代位弁済激増が示すもの

代位弁済の激増とは、貸し倒れの激増を意味する。中小企業の倒産が今後激増してくるであろう前触れでもある。
中小企業の経営悪化の原因には、資材高騰、円高、消費低迷等があるが、銀行の貸し渋りが資金繰りを大きく悪化させている。最近、銀行が全く貸してくれなくなったという、焦りの声を中小企業経営者から聞くようになった。

過去にもあった貸し渋り、貸し剥し

かつて、貸し渋りが社会問題になったことがある。バブル崩壊の後遺症で、銀行が自己資本比率を落とさないようにするため、また不動産の担保価値の低下から、融資に極めて消極的になり貸し渋りと言われた。さらには、融資を申し込むと、「とりあえず今ある借金を一度清算してくれたら、改めて運転資金を貸しますよ。」と言って借金を返済させておきながら、いざ融資の段となると「いやぁ、審査が通らなくて。」と融資を断ってくるという「貸し剥し」までもあった。
こうして中小企業はかつて銀行から煮え湯を飲まされたのであるが、また繰り返されようとしている。

かつての処方箋、特別保証制度

平成10年8月、小渕政権下で、中小企業等貸し渋り対策大綱を発表。新たに総額30兆円の信用保証枠を創設し、平成10年10月1日から平成12年3月31日までの期限付きで特別保証制度を設けた。
通常は、信用保証協会が、保証の申込に対して返済能力につき審査するのであるが、貸し渋りにあっている事業者に対しては、破産状態にある企業等一定の場合(いわゆるネガティブリスト)を除き、原則として保証するというもので、証明書類も不要。事実上無審査に等しいものであった。
当時、ベンツの売上が急増する等、特別保証制度で浪費をした事業主もいたりして、モラル・ハザードを引き起こしたとの批判も多かった。
しかし、それ以上に悪質なのは銀行であった。保証協会付で融資を得させたら、それで銀行プロパーの貸付金(保証協会の保証がついていない貸付金のこと)を完済させるという、すげ替え的なことも平気で行ったいた。
そもそも、無審査だったため、倒産寸前の会社が延命のために融資を受け、やっぱり破産するということも多かった。

特別保証制度が復活か

麻生政権は、景気対策で再び信用保証の特別枠をもうけるらしい。しかし、これが、ただちに効果を生じるかは疑問がある。
小渕政権時代、信用保証協会は借入金額を全額保証していた。
07年10月1日保証申込受付分からは、「責任共有制度」といって、一部の保証を除き借入額の80%しか保証されなくなったのであえる。20%でも未保証分がある限り、銀行は貸し渋りを止めないかもしれない。
そこで、10月19日のサンデープロジェクトで、麻生首相の私的相談役とも言われるリチャード・クーが、暫定的に、この保証割合の見直しを提言していた。
検討すべき提言だと思うが、かつてのように無審査でこれを行うとなれば、またぞろモラルハザードが起こったり、銀行のプロパー債権の付け替えが行われかねないことになる。