「消費者保護の観点から国会で質問した。」 〜 前田議員の弁解について思う

民主党前田雄吉議員が、マルチ業界から講演料等の形で1000万円以上の金を受け取り、業界の利益を擁護する国会質問を繰り返している問題について13日付ブログで述べた。
15日の東京新聞によると、同議員は「悪徳業者を厳しく取り締まって業界健全化を促すとともに、消費者保護の観点から国会で質問してきた」と釈明、業界団体にも「末端販売員の教育を徹底するよう注文を付けてきた」という。

「消費者保護の観点」から質問したなどという、弁解が返ってくるとは思ってもみなかった。
マルチ商法被害に対して、「消費者保護の観点」から最前線で対処してきたのが、国民生活センターだが、前田議員が、同センターがマルチについてクーリングオフ相談の電話まで、苦情件数にカウントしているのではないかと、同センターを批判してきた。
消費者保護の足をひっぱっていたのは、前田議員その人ではないか。

さらに前田議員は、国民生活センターが発行したパンフレットをやり玉にあげ、同パンフが「『ネットワークビジネス』『MLM』とかたって友だちを勧誘し、会員にすることでマージンを得るというマルチ商法が広がっています」、「友だちが勧誘してきたら気づかせてあげよう!」などと書いているのを「NBを全否定するものであり、これは酷すぎる」と非難した。同センターの理事が、特異な一部の成功例を引用して多大な利益が容易に得られるかのように消費者を信じ込ませるというトラブル事例があるために制作したと、答弁すると、前田議員は「それなら順法精神のない法律を破る『悪徳マルチ』とすべきだ」「法令を順守し、健全な取引を行っている事業者がこれで損害を被った場合、その損害は国センが補償すべきではないか」と、脅すようなことも言っている。
こうした質問をしていながら、なおかつ「消費者保護の観点から」というのだろうか。

前田議員は、日本流通産業新聞の03年11月13日号で、「特定商取引法の改正なども視野に入れたいと考えております。現行法には、偏見に満ちている部分が少なからず存在している。」「偏見に満ちている連鎖販売取引という言葉を変えることを変革の第一歩とし、」などと述べている。彼はいったい、どのような改正案を考えていたのであろうか。おそらく「消費者保護」とは反対方向の改正を目指していたのではないか。

前田議員は、マルチにはいいマルチと、悪いマルチがあるという。
しかし大手のマルチも、問題を起こしている。
業界でも大手のニューウェイズが、08年2月20日に経産省から一部の業務停止処分を受けたが、次のような特定商取引法違反行為を指摘されている。
①「事業立ち上げの話がある。」「すごくためになる話があるから来ないか。」「久しぶりに食事をしないか。もうかる仕事の話もしたいから。」等と言うのみで、ニューウェイズ社の名称も、会員に勧誘する目的であることも、その勧誘商品も明らかにせずに勧誘した。
②勧誘者は、他社の製品は有害で同社の製品のみが安全であるという事実がないにもかわらず、「一般に市販されている洗剤メーカーなどの商品を使っていると将来私たちは癌になる。同社の商品はすべてナチュラル成分でできていて、化学物質を使っていない。」等と告げたり、あたかも同社の製品のみが安全であるかのように告げたり、「同社の商品でアトピーが治る。」等と告げたりするなど、商品の品質、効能について虚偽の事実を告げて勧誘を行った。
③同社の勧誘者は、実際には友人等を紹介するだけでは収入にならないにもかかわらず、「人に紹介するとポイントがたまって収入になる。」と告げたり、会員全体のうち、1か月に1000ドル(約10万円)以上のボーナスを得ている者はわずかであるのに、「1か月で100万円くらいの収入が得られる。」と告げ、さらに、カーボーナス、ハウスボーナスが上位のわずかのディストリビューターのみを対象にした購入ローンを補てんする制度であるにもかかわらず、「会社が高級車を買ってくれる、家も買ってくれる。」等とあたかも誰もが継続的に高収入を得られたり、車や家を買ってもらえるかのように虚偽の事実を告げた。
④「お金は消費者金融で借りればよい。みんな借りてるから。ニューウエイズはもうかるのですぐ返せるから。」等と告げるなど、利益を得ることが確実であると誤解させて勧誘した。
⑤消費者が「健康食品や化粧品の販売は嫌だから。」と言っているにもかかわらず、「そんなものではない。」とその内容は教えずに公民館での勧誘セミナーに誘い込んだりするなど、電話等で誘引した消費者に対し、勧誘する目的を告げずに、公衆の出入りする場所以外の場所(要するに外部の人が出入りしない、閉ざされた空間)において、契約の締結について勧誘を行った。

これに類する事例は、他の大手ネットワークビジネスでもよく見聞される。
前田議員はこういった実態は知っているのだろうか。