賃貸建物の欠陥で賃借人が損害を受けた場合の法律構成

賃貸人は、賃貸建物を使用・収益に適する状態において賃借人に使用・収益させる義務を負っているため、同義務の違反があったとして損害賠償を求めることが可能です(債務不履行構成)。しかし、民法第717 条1 項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とあり、この条文に基づいて家主に損害賠償を求めることも可能です(不法行為構成)。
民法717条は無過失責任ですので、債務不履行構成より不法行為構成で請求する方が得です。
なお民法717条は一時的に占有者が、二次的に所有者が責任を負うとされ、賃借人は「占有者」ではないかという指摘をされることがありますが、ここでいう「占有者」は「瑕疵ある場合、独自の権限に基づきその瑕疵を修補しうる又は修補すべき地位にある者」を指すとされ、賃借人は「占有者」には当たりません。
賃貸人=所有者であれば、賃貸人が占有者兼所有者ということになり、賃貸人が絶対的責任を負うことになります。