同一労働同一賃金の先取り判決

定年退職後に有期雇用契約で再雇用されたトラック運転手3人が、正社員との賃金格差の是正を求めた訴訟で、東京地裁は5月13日、「定年前と同じ立場で同じ仕事をさせながら、給与水準を下げてコスト圧縮の手段にするのは正当ではない」「業務内容が同じなのに賃金が異なるのは不合理」として、請求通り正社員との賃金の差額計約400万円を支払うよう運送会社に命じました。
労働契約法20条は「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としており、本件は労働契約法20条を適用し、正社員と同一労働であるのに賃金に格差があり、なんら合理性を認められないとし、賃金の差額を支給するよう求められたのです。
高齢者を再雇用する場合、通常賃金が減額されるのが普通です。社労士さんのサイトでは、単純に5割の賃金を支給すれば大丈夫と言っているものもありますが、この判決によれば、そうした解釈は認められないことになります。
賃金の格差を合理的たらしめるだけの、業務の内容や責任等に違いがなければならないことになります。ホワイトカラー労働者であれば、このような差を設けることは比較的容易ですが、ブルーカラー労働者の場合はなかなか差を設けにくいのが現状でしょう。
上記判例は、高齢者の再雇用の場面だけでなく、現在係争中のメトロ・コマース事件等でこうした解釈が示されるのか、大いに注目されます。