遺言書に赤ボールペンで大きく斜線を一本引いたらどうなるか

11月20日,最高裁で遺言について興味ある判決がでました。

病院を経営する資産家の男性が,その財産の大半を長男に相続させるとした自筆の遺言書を作成しました。同男性の死亡後,金庫から遺言書が発見されました。ただ,この遺言書は用紙1枚で、文面の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が1本引かれていたのです。
民法は「遺言書を故意に破棄した時は、撤回したものとみなす」と規定していますが、具体的にどのような行為が破棄に当たるのかは必ずしも明らかではありません。第1審、第2審は、斜線を引いたのは父親と認定する一方、「文字が判読できる」として遺言を有効と判断しました。これに対して、最高裁は、「遺言書の文面全体に故意に斜線を引くことは、遺言全ての効力を失わせる意思の表れで、撤回したとみなされる」とし,遺言を無効と判断しました。
注意してほしいのは,金庫を開けるときは必ず,他の相続人を立ち会わせること。そうでないと,こうした遺言が出てきた場合,本当に父親が斜線を引いたかが争いになってしまいます。もし,自分に不利な遺言だからということで斜線を引いてしまうと,相続人としての資格を失ってしまいますので,そんなことはくれぐれもしないようにしてください。