オバマ慰安婦発言の衝撃

オバマ慰安婦発言があって、しばらくは本当にそんなことを言ったのか疑問を持っていた。また韓国の我田引水的報道ではないかと疑ったのである。しかしホワイトハウスのHPにある記者会見の記録を見ると、確かにニュースが言っているようなことを言っている。
ネットを見ると、オバマの発言の切り張りにすぎないとの声があるが、違う。確かにオバマ従軍慰安婦について「a terrible, egregious violation of human rights」すなわち「ぞってする、言語道断な人権侵害だ」と非難しているのだ。まさに吐き捨てるような言い方で、いわばテレビでむかつく場面を見て悪態をつくような、そんな表現だ。
オバマは、日米首脳の共同声明では、尖閣は安保の対象になるといったが、その一方で日本での記者会見で「中国から尖閣を守るために米国は武力を行使するのか」と聞かれ「規範に反した国が出るたびに米国は武力行使しなければいけないということではない。」と突き放した言い方をしている。
今回のオバマの、日韓訪問でよく分かったのは、中韓蜜月を容認し、日本も韓国を見習えと思っているということだ。このまま行くと、北朝鮮は米国へも到達する核ミサイルを開発する。そうなれば、あの何をしでかすかわからない北朝鮮を挑発すべきでなく、中韓が結束して北朝鮮をなだめてくれればいい。日本もその輪に加わるべきだ。そうすれば6カ国協議(これにロシアが入っていることが問題だが)の枠の中で、孤立無援の北朝鮮を封じ込めることが可能だ。
オバマのこうした発想には、米国人の安全保障観の変化も反映されている。米国は古くはベトナム、近い時期ではアフガニスタンイラクに関与して、結局何も得られなかった。第二次大戦後しばらくは、米国が世界を救ったということで、またソ連という敵役もいたことで、米国が自由世界をリードするのだという熱狂もあったが、今や消え去った。もう一つには中間層の消失という社会構造の変化がある。米国は今や1%の超富裕層と99%の貧困層とに分断される。衣食足りて礼節を知るというように、食うのに必死の人間が世界平和だなんて言っていられない。米世論も日米安保条約を維持すべきという意見を持つ人が、11年には90%近くいたが、現在は70%以下に急落している。北朝鮮の核ミサイルが米国を狙う事態になればさらにこの数字は落下するだろう。
5年前、このブログで、日本にとって本当の脅威は、日本を狙うノドンではなく、米国をも狙えるテポドンだ、と指摘したが、それが現実のものになろうとしている。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090709/1247168298
今や、日本は米国という恋人に捨てられつつある状況だ。米国は日本と言う恋人も、いろいろ貢いでくれるし、役にも立つから一応はつなぎとめておこうと思うが、「もう賞味期限切れかな」と思っている。むしろ、まだ若くてぴちぴちした中国とうまくやっていきたい。中国はもっと経済も大きくなるから、そっちと手を組んだ方がはるかに美味しい。それに中国からはかなりの金を借りている。中国は日本と違って、へそを曲げたら国際金融というヤクザに債権を売り飛ばしてしまうかもしれないから、機嫌もとっておきたい。
安倍さんも、オバマが日本にいたとき、「あんた私と中国のどっちをとるのよ。はっきり言いなさいよ、はっきり!」と言うべきだったのだ。でもそれを言うとオバマに「どっちもだよ」(ということは中国を取るということだが)と言われるのを恐れて、結局言えなかったのではないか。オバマも、中国の友達の韓国にすり寄って、「中国にもおれの気持ちを伝えておいてくれよ」と言っているかもしれない。
ここまで来たら、日本はどうすべきか。中国の下風に立ち、中国のご機嫌をとるか、それとも、自立の道を選ぶかしかないということだろう。