尖閣前と尖閣後で大きく変わった中国のビジネス環境

日本経済新聞社がまとめた「中国進出日本企業アンケート」が8月23日付で発表された。昨年9月以来、沖縄県尖閣諸島をめぐって混乱が続いているが、尖閣前と尖閣後でビジネス環境が大きく変わっていることが読み取れる。

売上高尖閣前に回復せずが3割強

アンケートによると、中国事業の売上高については、「減少したままで回復の兆しなし」が7%。「回復に向かうも、尖閣前の水準に戻らず」が24.4%、「尖閣前の水準まで回復」が41.9%、尖閣前の水準を上回っている」が18.6%、その他が8.1%となっている。
政府間で対立が激化しても、経済交流は活発という「政冷経熱」が、従来の形であった。しかし、最近は中国人の反日感情が悪化し、それが商品購入にも影響が出てきている。A国製と日本製とで、商品力が同等であれば、反日感情がからんで、A国製が選ばれる、ということも当然あるだろう。しかし、尖閣前より売り上げを伸ばしている会社が2割近くあることにも注目する必要がある。いくら反日だ、反日だと言っていても、商品の魅力が他を上回れば、現実主義者たる中国人は日本商品を買うだろう。
ただ、商品がコモディティー化していて、日本製というブランドだけで買って貰えた商品は先行きが厳しくなってくる。そういった場合、中国市場は鶏肋(けいろく)となりかねない(三国志の逸話です)。

賃金上昇は緩和

賃金上昇圧力は緩和したようだ。同紙によれば、賃金の前年比上昇率を12年調査との比較でみると、「5〜9%上昇」が25%から40%に増加し、「10〜15%上昇」が51%から40%に減少し、賃金上昇が大幅に減速した。ちなみに11年調査では二桁上昇が8割近くあった。
政府は所得倍増を言うが、その一方で経済成長率を7.5%と見込んでいる。今後、経済成長力が伸びるとは思われず、であれば賃金上昇も5〜9%といったところが妥当な水準だろう。

トップ人事にも変化

なお、尖閣の影響もあると思われるが、現地化のために「中国人社員の幹部登用を認める」が77%。「会長に登用した」が8%、「社長に登用した」は29%にもなる。
中国ではヘッドハンティングが盛んで、トップの地位を与えないと人座が流出してしまうとうのが第一の理由だろう。
ただ、尖閣以降は労働管理が難しさを増している、という事情もある。労働者の争議を、地方政府が糸を引いているとは言わないものの、一心同体と言っていい関係にある。その意味でも、地方政府とのコネクションを良くしておくためにも、労働者の人心把握のためにも、トップを中国人にするというのは一つの選択だろう。ただ、中国人にとって、ナンバー1の指示は絶対だが、ナンバー2の指示はそうではない。ナンバー2の指示に不満があると、ナンバー1に直談判に及ぶと聞く。こういった国民性も考えて、トップ人事も考える必要があるだろう。

派遣社員を10%以下とする新規制への対処

中国政府は雇用者に占める派遣社員の比率を10%未満にすることを企業に義務付ける方針と伝えられているが、これに対する対策としては「正社員教育を強化し、効率化を進める」との前向きの回答をした企業が23%で最も多かった。

微網対策も重要

中国の微網(ミニブログ)利用者の増加に対しては、「微網を通じて商品情報などを発信している」が19%、「顧客の動向や自社のイメージを知るためにソーシャルメディアの書き込みなどをチェックする」が20%だった。
13.8.23日経朝刊