米政府 友好国盗聴疑惑

 英Guardianは、6月30日、米国家安全保障局NSA)が日本を含む多数の外国の大使館などを盗聴対象にしていたと報じた。元CIA職員スノーデンが暴露したNSAの極秘文書から明らかになったとしている。
 2010年9月に作成された同文書には、38の外国大使館および代表部が「ターゲット」としてリストアップされている。盗聴手段は、通信機器に盗聴器を仕掛ける方法から特殊なアンテナで回線を傍受する方法まで多岐にわたるという。盗聴対象には、ワシントンやニューヨークにある欧州連合EU)代表部のほか、一部の中東諸国、フランス、イタリア、ギリシャをはじめ、同盟国である日本、メキシコ、韓国、インド、トルコなどの大使館が含まれる。
 菅官房長官は、外交ルートを通じて米政府に事実関係の確認を求めているとしているが、米政府が「どこそこに盗聴のための機器を設置しましたよ」などと教えてくれるはずがなかろう。大英帝国の全盛期に首相を務めたパーマストンが「大英帝国には永遠の友も永遠の敵もない。存在するのは永遠の国益だけである。」と述べているが、この言葉の意味をしっかりと噛みしめるべきだ。国家間には常に利害の対立があり、そのために友好国相手といえども諜報の努力を惜しまないのが国際政治の当然の姿だ。それを「友好国相手に諜報はけしからん」と怒っても無知を笑われるだけである。
 エシュロンをご存じだろうか、「米、英、加、豪、ニュージーランド英語圏5カ国で構成される盗聴組織の暗号名で、商業通信衛星インテルサットの電波を地上で受信している」といわれているが、さらには地上波無線、短波無線や携帯電話などの電波も拾っているという。これも主導しているのは米NSAで、受信基地は世界各地にある。日本では三沢基地におかれている。三沢基地にある「象の檻」と言われる円筒状の巨大アンテナもこのエシュロンの機能の一部を負担していると言われる。
 日本のTPP交渉チームの中の会話は当然米国による盗聴の標的になっているはずだ。「盗聴するな」と言っても無駄で、「盗聴されても大丈夫なように」様々な工夫をこらすしかない。