銀行株式保有5%枠見直し

金融庁は銀行による事業会社への出資比率規制を見直す方針を固めた。出資比率の上限を5%以下とした現行の「5%ルール」を改め、中小企業などに20%未満の出資を認める方向で検討する。
本日付日刊工業新聞
(評)
10月10日、金融庁の金融審議会は金融システムの安定に関する作業部会を開き、5%ルールの緩和に向けた具体的議論を始めている。日刊工業新聞のニュースサイトで、この記事があったのだが、具体的詳細は不明(WEB会員になっていないので)。
銀行法16条の3は、銀行又はその子会社は、国内の会社の議決権については、合算して、総株主等の議決権の5%を超える議決権を取得し、又は保有してはならない、と規定している。銀行が本業以外の事業で経営の健全性を損なうことがないようにというのがその理由だ。
ただ、実際には例外(内閣府令で規定)も認められている。
1融資先の合理的な経営改善計画に基づいて株式等を取得する場合(DES)。
2以下の非上場株式会社の議決権を、投資専門子会社を通じて取得・保有する場合

  • 中小企業新事業活動促進法上の中小企業者で、設立10年未満、収入の3%超を試験研究費等に宛てている
  • 同法上の中小企業者で、設立1年未満、常勤研究者が2人以上で、役員従業員の1割以上いる。
  • 同法に基づき異分野連携の認定等を受けている会社

3以下のいずれかに該当する非上場の株式会社の議決権を、投資専門子会社を通じて取得・保有する場合

  • 中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律上の「経営革新計画」の承認を受けている会社
  • 産活法上の「事業再構築計画」等の認定を受けている会社
  • 民事再生法会社更生法上の「再生計画」・「更生計画」の認可を受けている会社
  • 銀行等が債権放棄、DES(株と債務の交換)、DDS(劣後ローンとの交換)のいずれかを実施することを内容とする合理的な経営改善計画を実施している会社

日本再生戦略の別表工程表で、「2012年度に実施すべき事項」としてこの5%出資規制の見直しが明記されている。来年3月に金融円滑化法が終了するが、経営改善計画が作れていないか、下振れしている中小企業が多く、このままでは銀行のリスケも止められ、死屍累々ということになりかねない。
今でも銀行はDESを通じて融資先支援をしているが、結局5%ルールがあるため、無議決権株式を利用することが多い。しかし、その後も経営改善が進まなければ、結局銀行が損を被ることになる。銀行としてはそうならないように、金も出すが口も出したい。しかし5%ルールが邪魔になって、口も出せず、結果DESについても及び腰になる。これが今回の5%ルール緩和の理由だ。
またこうして、銀行が経営支援をしても、株を持っていられるのは1年が原則となっているが、一度潰れかかっている会社が1年猶予されただけでは、再生がかなわない。銀行としても経営改善計画の履行状況を見極めるのに3〜5年程度はかけたい。
ただ、銀行が口を出すといっても、ただ目標達成を言えば足りるものではない。実抜要件を守らせるのも重要だが、それ以上に重要なのはコンサルティング能力だ。財務分析を行い、弱点を見つけ、どこをどの程度改善すれば、再建できるのか。これを教えることのできる行員を育てなければならない。しかし今の銀行で、企業融資について、支店決裁は削られ、本店決済が中心。現場の行員のコンサルティング力が落ちていると言われる。このような制度を作っても、このままでは仏作って魂入れずだ。