IMF 変わる勢力地図

 IMFは10年12月に新興国の出資割合を大幅に高める改革案を決議済みだが、まだ発効はしていない。増資は出資比率で70%の承諾が必要になるためだ。ラガルド専務理事によると既に68.7%の同意を得ており、10月の東京会議での最終合意が可能だとの見解を表明した。しかし同時に決議された新興国からの理事登用拡大の件はまだ3割の国の同意を得られていないという。組織改革には出資割合で85%以上の承諾が必要だから、こちらは前途多難と言える。
 IMFの出資比率トップ10は現在次のようになっている。

  1. 米国   17.67%
  2. 日本    6.56
  3. ドイツ   6.11
  4. 英国    4.51
  5. フランス  4.51
  6. 中国    4.00
  7. イタリア  3.31
  8. サウジ   2.93
  9. カナダ   2.67
  10. ロシア   2.49

 注目してほしいのは米国の17.67%という数字。組織改革には85%の同意が必要なため、米国一国が反対すると85%には達しない。すなわちIMFとは、米国一国だけがVETO=拒否権を持つ組織なのである。米国が反対すると、米国だけが憎まれ役にならないように、他にも米国と同調して反対する国が出てくる。3割が同意していないというのは、こういうことではないか。
 ただ増資は10月に決まる。そのためトップ10も次のように入れ替わる。

  1. 米国   17.41%
  2. 日本    6.46
  3. 中国    6.39
  4. ドイツ   5.59
  5. 英国    4.23
  6. フランス  4.23
  7. イタリア  3.16
  8. インド   2.75
  9. ロシア   2.71
  10. ブラジル  2.32

 新興国の躍進が目立つが、米国一国がVETOを持っている事実には変化がない。