次はスペインか

 スペイン政府は5月11日に、総合対策を決定。不動産への融資債権について、国内銀行に対して、既に指示している540億ユーロのほか、新たに300億ユーロの引当金を積むように求めるほか、バッドバンク構想も盛り込んだ。スペイン国内銀の不良債権は1840億ユーロとされているが、市場にはもっと多いのではとの疑念も強い
  ムーディーズは5月17日の発表資料で、スペインの9銀行を3段階引き下げ、7行はなお格下げ方向で見直すとした。3段階引き下げられた9行の中には、同国最大手行のサンタンデール銀行が含まれている。
 さらに同日、5月9日に一部国有化されたスペイン国内銀行4位のバンキアで、10億ユーロ以上の預金が流出したと報道された(政府は否定)
 こうした報道の背景には、スペインの景気後退、スペイン国債の償還問題が絡んでいる。欧州委の5月11日ユーロ圏の2012年実質経済成長率見通し発表では、スペインの12年見通しは−1.8%(前回より0.8%下方修正)であり、13年も−0.3%に改善されるにすぎないとされる。
 スペインは12年の財政赤字をGDP比5.3%に引き下げることで合意しているが、欧州委の前記見通しでは、6.4%に高止まりすると予想されている(11年は6%計画のところ8.5%だった)。スペイン国債10年物は警戒ラインの6%を突破。市場推計では今年の国債入札の約8割はスペインの国内銀行が引き受けている(昨年12月以降、スペインの国内銀行の国債保有額は680憶ユーロ増えた)。これはECBがLTRO(長期リファイナンスオペ=3年物国債を銀行から買い上げる)の影響が大である。ECBは今年2月に第2回目となる3年物LTROオペを行ったが、落札総額は5295億ユーロという驚異的な規模を記録した。第1回(昨年12月)の4981億ユーロをさらに上回った。こうしてばらまかれたお金が国債購入に向かい、長期金利を下げてきた。しかし、長期金利が上昇すれば国債価格は下落し、含み損が拡大する。債務残高のGDP比は11年末で68.5%。イタリアの120.1%に比べれば低いが前年比7.3%の上昇を示している。
 スペイン政府の国債発行が難しくなれば、楽観的に見ても4360億ユーロの支援が必要になるという観測もある。EUは金融安全網を8000億ユーロに拡充することで合意済みだが、ギリシャ支援などに使う分を除くと融資枠は5000憶ユーロしかない。
 スペインの景気後退は一言で言って不動産バブルの崩壊に尽きる。リーマンショック前、スペインは空前の不動産ブームに沸いていた。当時スペインは欧州全体の半分のセメントを消費していると言われた。投資目的の住宅購入が進んだため、空家のマンションが激増し、住宅ローンも40年、50年ローンが当たり前という状態だった。