ギリシャ ユーロ離脱はありうるのか

 ギリシャのユーロ離脱がまた騒がれ始めた。
すでにEU、IMFギリシャに約1400億ユーロの油脂を実行し、民間金融機関も国債の債権カットに応じたが、政治は迷走を続けている。
5月6日に行われたギリシャの総選挙(1院制300議席)では、財政緊縮路線を進めてきた新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の獲得議席は、過半数に2議席足りない149議席で、連立与党が歴史的大敗を喫した。緊縮財政に反対の立場をとる急進左派連合が52議席と大幅に票を伸ばし、第2党となった。
 パプリアス大統領は7日、第1党ND(108議席)に組閣を指示し、直ちに連立協議が始まったが、不調。憲法の規定により、次に第2党の急進左派連合(52議席)に組閣が命じられたが、ND、PASOKが応ずるはずもなく、当然これも不調。最後に第3党のPASOK(41議席)が組閣をめざしたが、これも不調となった。このため、6月17日再選挙となる。
 最新の世論調査によると、急進左派連合は支持率24.5%でトップに立っている。ギリシャでは、規定により第1党にさらに50議席が上積みされる。旧政権の緊縮財政政策はIMFが行った支援の条件として行われている。急進左派連合主体の連立政権ができ、緊縮財政を転換するとなれば、IMFもEU諸国も支援は行わない。行き着く先はギリシャ国債のデフォルトである。
 今回の政治混乱で、ギリシャ国内銀行の預金流出が顕著だ。5月14日だけで少なくとも7億ユーロ(8億9400万ドル)の預金が引き出された。NDのサマラス党首は「09年に100万社あったギリシャ企業のうち、25万社が倒産し、30万社が支払能力を失った」と言っているという。ギリシャの1月の失業率は21.7%。20歳代前半の労働者は半数以上が失業状態にある。
ギリシャがユーロ圏を離脱し、かつての自国通貨ドラクマに戻る可能性が現実味を帯びつつある。
しかし、国民の8割はユーロ残留を望んでいる。ギリシャが独自通貨に戻るとなれば、一説によると貨幣価値は現在の半分に落ちるという。そうなるとユーロ建て負債は実質的に倍増することになる。政府にとっても、民間企業にとっても、大変な負担となる。ギリシャに有力な輸出産業はなく、自国通貨安はメリットよりデメリットのほうが大きい(観光産業にとってはプラス)。
 他のユーロ諸国にとっても、ギリシャのユーロ離脱=ギリシャ国債のデフォルトは多大な被害を及ぼす。ドイツ等の中央銀行ギリシャ中銀を通じ、1000億ユーロ程度の資金供給をしている。日米欧の金融機関は3月の債権カット後もなお630億ユーロの長期国債保有している。