米国債格下げ 円売りドル介入の拡大はいかに

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は8月5日、米国債の長期信用格付けを最高の「トリプルA」から1段階引き下げたと発表した。米国債の格下げは初めて。週明けの為替市場の動きが注目される。
 S&Pは7月中旬信頼に足りる財政再建には4兆ドル程度の財政赤字の削減が必要との考えを示していた。米議会で債務上限引き上げ問題はギリギリの2日にようやく決着はついたものの、与野党の合意では、財政赤字は10年間で2.4兆ドルを削減するに過ぎず、S&Pの格付維持の条件を下回った。ただ、S&Pが米連邦政府の将来の債務残高を2兆ドルも間違っており、FRBがこの間違いを指摘。S&Pもその間違いを認めたが、その直後に格下げが行われた。しかもムーディーズ、フィッチはトリプルAを維持する中、S&Pが独走した形だ。格付け会社の格付けが、世界経済を動かすとなれば、犬が尻尾に振り回されるのと同様のことになる。
 米国債を1兆1698億ドル保有する中国の(外貨準備総額は3兆ドル)国営新華社通信は「中国はドル資産の安全を保証するよう米国に要求するあらゆる権利を持つ」として、軍事費や社会保障費の削減を迫った。
 この中で、影響力を強めるのが日本だ。米国債を買い続ける日本政府は米政府にとって「打出の小槌」だ。4日、政府は4兆円規模のドル買い円売り介入を行ったが、こうした時期には米政府への応援エールになる。少なくとも、円高がこれ以上進まないよう、協調介入が出来ないか。