2国間クレジット制度にかける日本

京都議定書は欧州の経済覇権主義の道具

 気候変動枠組条約(COPは「Conference of the Parties」で、締約国会議の意味に過ぎず)で京都議定書が作られたりしているのを、日本のマスコミは、エコだ、エコだと有り難がっているが、とんだお人好しだ。この枠組みは、ヨーロッパの覇権主義の道具に過ぎない。だから、国連で「温暖化ガスを2020年までに90年比で25%削減する」などと首相が国連で公約するような日本とは違い、頭の良い米中は、同条約を締結していない。
 日本は90年時点で省エネがかなり進んでいるため、25%などと言えば乾いた雑巾をしぼるようなもので実現は不可能。日本が公約を達成するには、京都議定書で認められた、クリーン開発メカニズム(CDM)を使って開発途上国の温暖化ガス削減のお手伝いをしなければならない。
 欧州はと言えば、各国別ではなく、EU全体で目標を達成すればいいので、省エネが遅れている東欧諸国の省エネを手助けするだけで良い。CDMなんか使う必要はない。だからCDMの利用手続は難しくすればするほど、日本の経済に負担になる、いわば日本いじめの仕組みにしかすぎない。
 そこで、経産省は、2国間クレジット制度を使って、温暖化ガス削減を図っている。

2国間クレジット制度

 2国間クレジットとは、2国間の政府協定の下、ベースライン(旧式技術を採用した場合の排出量)を基に、日本の最新技術を導入することで削減できた排出量を計測し、クレジットを認定する、というもの。CDMは手続が煩雑なため、企業が利用に足踏みをしているが、2国間協定なら、2政府間で柔軟に対応できるし、企業のインフラ輸出にもつながり、企業にとってもメリットがある。
 経産省は、将来COPでも採用されるだろうという「見込み」で、2国間協定を推進している。7月16日付日経でも、日本とベトナム政府が、今秋にも、石炭火力発電、セメント廃熱利用、省エネ家電等の省エネ技術を対象とした2国間クレジットに基本合意するとの報道があった。こうすれば、プラント輸出を国策として行うことができ、政府系金融機関の支援もえられるだろうから、企業も十分乗ってこれる話しだ。
 しかし、この制度、京都議定書で認められたCDMと異なり、まだCOPで認められた訳ではないから、これを行ったからといって、排出削減の実績にカウントされる訳ではない。

CDMの手続き

 WIKIPEDIAによるとCDMの手続は次のとおり。かなりわずらわしい(ただ絶えず改正が行われている)。
 まず、投資国(付属書I締約国)の事業主体と受入国の事業主体を中心として、関係組織が協議を行い、事業主体は実施計画とプロジェクト設計書(PDD)を作成する。この後、投資国と受入国の指定国家機関(DNA)にPDDをそれぞれ提出して承認を受ける。次に、指定運営組織(DOE)という第3者機関がPDDの有効化審査を行ったあと、気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に送付、事務局はこれを国際連合のクリーン開発メカニズム(CDM)理事会に送付する。有効化審査を通過すると、CDM理事会にはプロジェクトの登録を行う。登録の際、最大で35万ドルの登録料を支払い、これで事前の承認は完了する。

本当に2国間クレジット制度は採用されるのか

 確かにCOP15では、この制度の採用が議論されはした。しかし欧州は反対するだろう。せっかく、うまいことを言って、日本をいじめる道具を作り上げたのだから、当たり前だ。もしこれを実現するとなれば、この2国間クレジットをエサに米中を条約に引き入れるか、国がリスクを取る形で2国間クレジットを進め、締約した途上国を利用してCOPでの多数工作をするかしかない。前者はウルトラCに近いし、特に中国を引き入れるとなると、金も技術もしゃぶられることになる。
 さらには外交努力も必要だ。非力な日本外交が、老練な欧州外交を、しかも単独で打ち破れるのか?答えは見えているような気がするが、、、