金融庁 IFRSの導入延期を検討
金融庁に動き
企業会計審議会は、12年を目途にIFRSを上場企業に強制適用するかどうかについて結論を出すとしており、金融庁も2015年から16年にも上場企業の連結決算にIFRSを強制適用する方向で調節に動いてきた。しかし、ここにきて急に金融庁でも、慎重論が強くなり、月内にも企業会計審議会を開催し、IFRSの強制適用の延期するかどうかを議論することになった。
IFRSとは
国際会計基準審議会(本部ロンドン)が策定した企業会計ルール。純利益に株式や含み損益を加えた「包括利益」など、企業の現在の資産価値を重視する時価会計主義を基本としている。現在の日本の企業会計は、株式で言えば取得価格を基準とするなど、期中にいくら儲けたかを重視している。子会社等、安定的に保有している株式についても、その株価の上下が会社の資産価値に影響させないやり方だ。子会社の株は売買目的で持っている訳ではないから、その株価を資産評価に反映させるべきでないという考え方だ。
欧州はとにかく、国際標準を作るのに熱心というより、自分らの標準を国際標準化するのに熱心だ。このIFRSは、その会計基準版である。そのため、米国は距離を置いていたし、日本も導入論については消極的意見が財界にも多かった。当初は、米国も含め、IFRSへの参加が、最終的には世界の趨勢になるだろうという見立てから、そうれであれば「早いうちから参加を表明し、自国の基準を少しでもIFRSに認めてもらおう」という動きで今までは来ていた。
財界からの揺り戻し
東日本大震災で打撃を受けた製造業を中心に延期論が強まっており、経団連も1〜3年程度の導入延期を求める見通しで、金融庁の上記決定は、こうした財界の動きに応じたものだ。経団連は段階的な導入や、「全ての」上場企業に導入すること(海外で資金調達をしない会社を対象から外す)についても再検討を求める意向だという。
米国の姿勢転換の影響
IFRSについては、自国基準として全面採用する(アドプション)国もあれば、自国基準を維持しつつ、IFRSとの差異を縮小する(コンバージェンス)国もある。米証券取引委員会(SEC)は5月下旬に発表した作業計画で、5〜7年かけてコンバージェンスを進めていく一方で、IFRSの導入時期を先送りする旨決定した。金融庁のIFRS導入延期も、米国のこうした動きにも影響されてのことである。
(11.6.20日経夕刊)
準備期間5−7年
自見金融相は6月21日の閣議決定後の記者会見で「2015年3月期からの強制適用はない」と明言。その上で少なくとも3年としている適用開始に向けた準備期間を「5〜7年に延長する」と表明した。(11.6.21日経夕刊)