日印EPA大筋合意に思う

日印EPA大筋合意

 EPAとは経済連携協定。FTA=自由貿易協定に比べて、投資規制や労働者の入国制限なども取り除くため、範囲が広い。日本は現在メキシコ、ASEAN諸国等と締結、ペルー、豪州と交渉中だ。
 家電、自動車部品、鉄鋼製品には現行7.5%から10%の関税がかかっているが、今後10年間をかけて撤廃される。しかし自動車は対象外。自動車は現在100%もの関税がかかっている。結局自動車部品は輸出できるが完成車は輸出しても2倍の価格になるので、実質輸出できないことになる。そのため、今後韓国現代自動車に対抗するためには現地生産を積極的に進める必要があるだろう。
 ところで日印EPA以前に、韓国はすでに10年1月にインドとのEPAを締結しており、後塵を拝した訳だが、韓国は関税無税化には5-8年で済むのに対し、日本は10年間。双方とも段階的に関税は低減するが、常に韓国の後塵を拝することになる。
 自動車については、交渉当初から協議対象から外されていたし、自動車部品についてもまだ細目については未定だという。

日越EPAの失敗例

 12日付日経によれば、インド側の妥協を得られなかったのが。看護士等の労働力受け入れに日本が消極的だったからという。日本はこれについては前科がある。日本はベトナムとEPA協定を締結し、看護士の受け入れをしたのだが、日本人と同様の国家試験合格を要求している。当然漢字の読み書きも日本人並みを要求される。結果ほとんどのベトナム受験生が不合格となる。そのため希望者も減りつつある。また以前は外国研修生に対する日本語教育の予算がついたが、それもつかなくなった。インド人看護婦は英語ができるのだから、海外から医療ツアーを呼び込むのに有利だと思うのだが、現実はそうはいかないらしい。

対欧州、対米国ではどうか

 今後、一番の難関は対EU、対米国である。この両国とのFTAについても韓国が先行している。あとは両国の議会承認を待つばかりだ。
 経産省は、韓欧EPA協定を馬鹿にした。韓国がEPA締結のために、EUの自動車製造の国際標準を丸呑みにしたからだ。経産省の役人連中は、これを指して「国辱的」と言ったという。しかし馬鹿はどちらか。答えは明白だろう。韓欧EPAの承認に欧州のうち1国が反対している。イタリアだ。イタリアは、フィアット、服飾のほかはエスプレッソマシーンくらいしか輸出できる工業製品がないため、必死なのである。ただイタリアも、「中型車は協定発効から3年以内、小型車は5年以内に関税を撤廃する」という内容のものを修正し、期限を延長するよう求めているにずぎない。承認も時間の問題だろう。
 韓国は米国ともFTAを締結している。オバマは韓国とのEPA発行を強く後押ししているが、議会が難色を示している。しかし、日本はこれを喜んでいる余裕はない。米国のFTA締結は先進国としては韓国が最後になるかもしれない。韓国の後ろに並んでいる日本は米国から「前の人が最後。もううちに帰りなさい」といわれたとして不思議はないのだ。