オバマ米大統領が21日に打ち出した新金融規制案

オバマの新金融規制

1月21日、オバマが新金融規制案を打ち出した。誰も予想していない政策転換で世界を驚かせた。オバマは、ウォール街の代弁者ではないかという受け止め方が、これまで一般的だったのではないか、と思われるが、今回の規制案は金融規制強化に大きく舵を切った。
 米国では今年は中間選挙の年。オバマも選挙向けに、銀行叩きを始めたのだろう。

規制案の概要

 規制案の概要は次の通り。
 銀行の傘下でヘッジファンド業務はできないほか、自己勘定取引も禁止される。自己勘定取引とは、預金を投資するのではなく、よそから借りた金で投資をする手法。自己資本1、他人資本9となると、レバリッジは10倍になる。低金利で調達した資金をリスクの高い投資に回すことでリスクのミスマッチが起き、安易なリスク投資が横行した(普通ハイリスク投資のための借入には高い金利がかかるので、ハイリスク投資に一定の歯止めがかかるが、それがない)という反省がそこにはある。預金を持つ金融機関は、預金者保護の名分でFRBから貸し出しを受けられるのだが、預金業務と高リスク投資の兼業を禁止することで、ハイリスク投資のつけを公的資金が払うことがないようにする。
 二つ目のポイントは、負債の規模の規制だ。現行規制でも、全米の預金シェアの10%を超える銀行合併は認められないが、この規定を負債の市場シェアにも応用しようというものだ。
 一部報道では、ゴールドマン・サックスが銀行免許を返上するのではないかと伝えられた。銀行免許を持っている限り、投資銀行はできないから、投資銀業務で巨大な収益を上げている同社なら、そうせざるを得ないだろうとの観測があってのことだ。今回の金融規制案が実行に移されると、新興国経済にも影響が及ぶ。新興国経済へのリスクマネー供給に米銀が大きな役割を果たしていたからだ。このため、コモディティ価格(商品先物相場と同義)が下落したのもこのためだ。

円はどうなる

 規制案が発表になってから、株安、円高が進行したが、ドルキャリートレードの巻き戻しが全面的に起こり、リパトリエーション(資金の本国還流)でドル高になると予想する向きもある。