インド、インフレで金融緩和姿勢を転換

インド中銀、現金準備率を引き上げ

 インド準備銀行(中央銀行)が、1月29日に開いた政策決定会合で、流動する資金量を管理する現金準備率を0.75%上げ5.75%にする。08年秋以降の金融緩和姿勢を転換した。
 これには近時、インドの物価上昇が加速していることが背景にある。インドの卸売りインフレ率(WPI)は08年当初は10%を超えていたが、リーマンショックを機にWPI上昇率は鈍化09年6月には09年6月にはマイナスとなったが、その後再び上昇。10月は1.34%、11月は4.78%と上昇率が加速、12月には7.31%にまで急加速した。

なぜCPIでなく、WPIなのか

 物価指数としては、卸売物価指数(WPI)と、消費者物価指数(CPI)の二つがあるが、インドでのインフレ率の指標はWPIが用いられる。というのも、インドでは総合的なCPIはないからだ。インドのCPIは、都市部非肉体労働者、農業労働者、農村労働者、工業労働者のそれぞれを対象とした4種類のCPIに分かれている。インド社会は農村と都会、富裕層と貧困層、といった具合に、社会は多様で、同質性を欠く。そのため、総合的なCPIを出しても経済政策に使えないからだ。

新興国頼りも限界か

 インド政府は08年10月から09年3月にかけて、物品税率を14%から8%、サービス税率を12%から10%に引き下げるなど、約800億ドル(約7兆円)規模の景気刺激策を打ち出し、景気を下支えした。この刺激策がなければ、同時期のGDP成長率は1%にも満たなかっただろう。だがこの景気刺激策のおかげで、インドは5.8%のGDP成長率を達成したのだ。
 この時期中国の4兆元の景気対策ばかりに世間の目が行っていたが、インドも実は積極財政政策をとっていたのだ。
 しかし、中国では資産バブルが、インドではインフレが懸念されている。そのため今月になって、中国は預金準備率を引き上げ、インドも現金準備率を引き上げたというわけだ。新興国景気も要は政府が金をジャブジャブ注ぎ込んだからに過ぎない。しかし、インフレリスク、長期金利の上昇リスクがある以上、どこかで引き締める必要がある。09年は新興国が世界経済をけん引していた年だったが、10年は新興国が世界経済の足を引っ張る年になるかもしれない。