中国銀行融資 上期だけで100兆円

上半期の中国商業銀行融資累計額は7兆元

 中国の商業銀行による1−5月の累計融資額は5兆8000億元、6月の増加額も1兆2000億元に達する見込みだ。合計すると上半期で7兆元(約100兆円)の融資が行われたことになる。08年は、1年間で4兆9100億元だったから、約3倍のハイペースで融資が増えたことになる。

昨年11月から融資拡大

 中国人民銀行は、昨年11月には融資の総量規制を停止し、銀行の融資拡大を促す行政指導に乗り出している。報道では、4兆元の景気対策だけが強調されがちだが、この銀行融資の拡大規模は4兆元を上回っている。

余った金は土地と株式に向かう

 国務院発展研究センター(政府直属の経済系シンクタンク)の魏加寧マクロ経済研究部副部長は「銀行融資の半分は株式市場などに流れ込んでおり、実体経済に入っていない」と指摘している(09.7.2日経)。これは何も目新しい指摘ではなく、上海株式市場、香港株式市場の株価高騰、地価高騰の背景として、かねてから言われてきたことである(http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090612/1244809913
これは当たり前の話で、いくら政府主導でお金を民間に供給しても、欧米の景気回復が無い限り、輸出主導の中国経済にそれを消化するだけのキャパシティーが無い。結局行き場を失った金は投資に向かうのは必然である。
 1日の上海株式市場は、上海総合指数が3008円の大台に乗った。3000円台は13カ月ぶりのことになる。しかし、都市部を中心に消費者物価指数は08年12月から下落が続いており、需給ギャップによるデフレ圧力が原因と考えられている。輸出の回復もまだまだ。上海株の上昇も根拠なき狂騒の結果のように思われる。

金融引き締めに政策転換はいつ

 中国人民銀行は、6月25日の金融政策委員会会合の後、中国経済は回復軌道にあるが外需がまだ弱くしっかりとした足取りには至っていないため、引き続き「緩和的な金融政策を維持」するとの方針を示した。
 リーマン・ブラザーズの元CEOのリチャード・ファルドは、議会公聴会で「皆が踊っている間はパーティはやめられない。たとえそれが非合理的なものであったとしても」と言った。将来の破綻がわかっていても、このパーティを続けている間は儲かる。皆が儲かっているのに自分だけやらないわけにはいかない、という心理に皆が襲われていたのだというのだ。
 中国でも、このような金融緩和策がいつまでも続くはずがない。中国銀行業監督管理委員会は6月下旬、商業銀行に融資審査を厳格化するよう指示する緊急通知を出したという。中央銀行の役割は、パーティの最中にパンチボウルを片付けることにあるという。

追加

 中国人民銀行は7月8日、6月の人民元融資の増加額が1兆5304億元になったと発表した。1-6月の累計は7兆3667億元(101兆円)となった。人民元の融資増加額は3月に1兆8900億元と月ベースで過去最高を記録した後、2か月連続で1兆元を下回り、いったんは落ち着きを見せていたが、その後また増加の勢いを見せている。中国の大手銀行は実質党の支配下にあるので、上記融資の拡大は国策と言っていい。
(2009/7/15追加)
 温家宝首相は8月22〜24日に淅江省を視察した際に「マクロ経済の方向を堅持する方針はゆるがない」とし、「積極的な財政政策」と「適度に緩和的な金融政策」を継続すると明言した。(2009/8/25日経)
 しかし7月の融資増加額は3559億元と前月の4分の1以下にとどまっている(2009/8/29日経)。
 また8月28日付ロイターによると、中国の銀行監督当局は国内銀行に対し、月末に貸し出しを急ぐことのないよう口頭で指示をしたという。同報道は「銀行関係者によると8月の銀行融資はこれまでのところ2000億元」とも報じており、7月の水準をさらに下回ることになる。しかし8月22日付日経によれば「中国国営の新華社系の経済紙、中国証券報は21日、金融機関による人民元融資残高の増加額が8月は5000億元前後になる」との見通しを発表した。全く逆の内容の報道だが、中国は情報も国家が管理しているため、どちらが本当なのか判断に苦しむ。