クリントン米国務長官イスラエル訪問

ガザ復興国際会議開催

 パレスチナ自治区ガザの復興支援を協議する国際会議が2日、エジプトで開催された。今回の国際会議には米国、日本、アラブ諸国、国連、EUなど約80の国・国際機関が参加。
 米国が9億ドル、サウジアラビアが10億ドル、EUが5億5000万ドル、日本は2億ドルの支援を表明した。総額44億8100万ドルの支援。アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は約28億ドルの支援を求めていたが、これを大きく上回る支援が集まったことになる。

ガザの惨状

 イスラエルは昨年末から今年1月にかけてガザ地区を攻撃。パレスチナ自治政府発表によると、死者1300人以上(子供410人)。家屋の破壊4036棟・損壊1万1514棟、病院の破壊3件・損壊24件、学校の破壊10校・損壊171校、撤去必要ながれきは60万トンに及ぶという。そのほかにも、送電網など社会インフラも損壊した。電気の供給が止まると、上下水の供給も止まってしまう。

イスラエル超右派政権誕生 クリントン指示を表明

 クリントン国務長官は、国際会議後にイスラエル入りした。
 停戦後もガザからイスラエル領へのロケット弾攻撃やイスラエル軍空爆などが散発的に続いている現状について、クリントン長官は「どんな国でもロケット弾が自国民を目がけて落ちてくるのを見過ごすことは難しい」と述べ、ガザからの攻撃にのみ懸念を示した。
 クリントン長官は、イスラエルと将来のパレスチナ国家樹立による2国家共存の方針を改めて述べたが、総選挙後は右派リクードが中心になって連立工作を進めているが、同長官は新政権がどのような枠組みになっても米国は支持する方針を伝えた。
 イスラエルの国会の定数は120。選挙の結果、左派の労働党が18、中道のカディマが28、右派のリクードが27、極右イスラエル我が家(イスラエル・べイテヌ)が15、ユダヤ教超正統派シャス11、その余の議席を7つの小党が占める。リクードカディマにも連立を持ちかけたが、カディマはこれを拒否。結局、リクードイスラエル我が家、シャスらの右派連立政権が誕生しそうだ。リクードは「パレスチナは軍隊を持つべきでない」とし、イスラエル我が家のリーバーマン党首は「パレスチナ人を陸地から追い払い、地中海でおぼれさせるのが一番だ」と主張、ユダヤ教超正統派のシャスはユダヤ原理主義とも呼ぶべき存在だ、この連立政権が、今後のイスラエルを指導するのだ。クリントン長官はこの政権を支持すると言う。
 オバマの弟の一人は、「バラクイスラエルの良き友人となるだろう」とインタビューに答えているという。

ハマスファタハの対立

 現在パレスチナは、穏健派といわれるファタハが支配するヨルダン西岸地区と、過激派といわれるハマスの支配するガザ地区に分裂している。きっかけは06年1月のパレスチナ評議会(日本の国会に相当)選挙でハマス過半数議席を占めたことに始まる。しかしアッバース自治政府議長が率いる穏健派ファタハは治安権限の移譲を拒否した。ハマスは、元々自派勢力が強いガザ地区で武力で制圧、アッバース率いるファタハヨルダン川西岸地区の支配権を維持した。パレスチナ自治政府を、選挙に負けたファタハが支配しているのは、ハマス=テロリストという図式が、出来上がってしまい、ハマスが国際的支持を得られていないからだ。ファタハは国民にではなく、外国政府に支持される存在になっているのである。
 今回の復興国際会議で、支援国は、イスラエルの承認、イスラエル自治政府が結んだ過去の合意の順守、暴力放棄の3条件の受け入れを拒否しているハマスが支援資金を受け取らないよう、国連機関などを通じてガザ支援を行うとしている。米国はさらに露骨で、支援金9億ドル中6億ドルがパレスチナ自治政府向けで、ガザへの緊急支援はその残りの3億ドルにすぎない。
 ハマスファタハは、2月26日、エジプト政府の仲介による和解協議がカイロであり、パレスチナ各派も参加し、5つの専門部会を設け、3月10日からの10日間ほどで詰めの話し合いを進めることで合意した。イスラエル右派連立政権の成立という外圧の中、双方の妥協が進む可能性もあるが、両者が手を結ぶのは容易なことではない。しかしこの分裂が続く限り、パレスチナ和平は実現しない。ハマスが軟化する姿勢を見せないと、国際的協力は得られない。

解決は可能

 48年のイスラエル建国で追い出されたパレスチナ難民のうち、現在はイスラエル領となっている自分の故郷に帰りたいと考えている人は1割前後にとどまるという世論調査結果を、パレスチナシンクタンクパレスチナ政策研究センター」が08年7月13日公表した。イスラエルは、和平交渉の前提として帰還権の放棄をパレスチナ自治政府に迫ってきた。上記の世論調査が難民の実際の真情を現しているとすると、妥協も可能なのではなかろうか。