クラヴィスからプロミスへの契約切替事案、ついに最高裁判決

ラヴィスからプロミスへの契約切替事案、ついに最高裁判決

 毎日新聞HPに次の記事が掲載された。
廃業した貸金子会社から債権を譲渡された消費者金融「プロミス」(東京都)に、都内の債務者が子会社との間で生じた過払い金の返還を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は弁論期日を9月2日に指定した。債務者の請求を棄却した1、2審判決が見直され、プロミス側逆転敗訴の可能性が出てきた。
1、2審判決によると、債務者は93年以降、子会社との間で借り入れと弁済を繰り返していたが、子会社が07年に廃業しプロミスが債権を引き継いだため、契約相手をプロミスに切り替えた。
債務者は09年に提訴。1、2審判決は「債務者は契約を切り替える際、プロミスが子会社の一切の債務(過払い金など)について連帯責任を負うことに関し、具体的な意思表示をすることなく契約を結んだ」と債務者側敗訴の判決を言い渡していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110614-00000005-mai-soci

毎日新聞記事の混乱

 毎日新聞の記事では、「債権の譲渡」とも「契約の切替」ともあるので、いったいどちらの事案なのかが不明だが、記事全体からすると契約切替事案であるように思える。

現在進行中の事件は

 この契約切替事案については、私も訴訟で勝ったり、負けたりで、正直提訴して見なければ、どうなるか分からないというのが現状だ。先月、継続中の事件の裁判官から電話があり「プロミス、クラヴィスの件で最高裁が判決を出すという話を聞いたのですが、先生はそう言う話を聞いたことがありますか。」とのこと。要するに裁判所でもどちらを勝たせるかで迷っているため、「近々最高裁判決が出るんなら、ここで無理して判決を書く必要もない」と考えてのこと。その時点では、そういった情報は入っていなかったが、取りあえず、次回期日までに新たな情報が入れば、判決を先に延ばすということで同意した。
 私が代理人になった事件では、6月8日付で東京地裁民事48部、同日付で東京簡裁民事第3室で、クラヴィス分の過払金もプロミスが支払うよう命ずる勝訴判決を得ている。
 プロミス、クラヴィス契約切替案件は、どの事件も手続がストップすることになりそうだ。
 追加)東京地裁民事14部でも6月10日付で、東京簡裁民事2室8係でも6月16日付で、一連計算の勝訴判決が出ました。
 東京地裁民事26部でも6月24日付で、一連計算の勝訴判決が出ました。

受益の意思表示

 プロミスとクオークローン(現クラヴィス)は、クラヴィス顧客にクラヴィス、プロミス店舗に行くよう誘導。顧客に対し、金利を安くするからクラヴィスからプロミスにあ借り換えるよう勧誘した。その際、プロミス側は「残高確認書兼振込代行申込書」なるものをクラヴィス顧客に提示、これに署名押印をさせていた。顧客がこの書面に署名押印したことが、過払金をプロミスに払ってもらうことに同意する受益の意思表示にあたらないかが争点になっている。
 というのも、同書面4項には「契約切替後のお問合せ窓口、および株式会社被告クオークローンサンライフ株式会社における本日までの取引に係る紛争等の窓口は、従前契約先に係わらずプロミス株式会社となることに異議はありません。」という文言があるからだ。
 確かに「紛争」とあるだけで、その具体的内容は明らかではなく、過払金請求権とは書かれていない。そのため、プロミスは「紛争の窓口」と書いただけで、クラヴィスの過払金債務を負担するとは書いていない、と主張する。
 しかし、同書面が作成された当時は、既にみなし弁済の成立範囲を大きく狭めた最高裁判所平成18年1月13日判決が出た後であり、過払金請求が激増していた時期である。そこにおける「紛争」とは、過払金返還請求権が想定されていたと考えるのが自然だ。過払金返還請求権の存在が明示されていないのは、うっかり「過払金請求の窓口は」などと書いてしまっては、過払金の存在をクラヴィス顧客に知らしめることになり、「寝ている子を起こしては困る」からだ。プロミス側の都合から、あえて「紛争の窓口」という曖昧な表現にされたのである。
 実際、被告プロミスは被告クラヴィスの過払金返還債務を併存的に引き受けている。それを直接書くべきところ、被告らは、被告プロミスが「紛争等の窓口」となるなどと、敢えて曖昧な表現で表示したのである。しかも、その事情はプロミスの「極力過払金返還債務の履行を免れたい」との意図に基づくものに過ぎない。意思表示に譬えて言えば、債務を引き受ける旨の内心の意思表示は有り、過払金請求が激増している中、貸金業者の認識を基準に考えれば、債務を引き受ける旨の表示上の効果意思もある。したがって、同書面を原告宛提示することは、プロミスがクラヴィスの過払金返還債務を引き受けた旨を表示したことになると言って良い。
 クラビス顧客は、係る内容の書面を受け取って、署名押印した以上、被告クラヴィスの過払金返還請求権を被告プロミスに請求しうることについての、受益の意思表示を行ったものということができる。
 東京地裁民事26部の6月24日付判決は、上記の論理を認めてくれた判決だった。

更新料の有効性につき、最高裁第2小法廷が7月15日午後1時30分に判決

最高裁でついに決着

 更新料の有効、無効を争って上告されている3つの裁判で、最高裁第2小法廷で口頭弁論が6月10日に開かれた。7月15日午後1時30分に判決が言い渡される。

消費者契約法10条

 更新料を定める約定については、消費者契約法10条に違反するかどうかをめぐって、従来厳しく争われて来た。同条は、
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって」(前段)
民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」(後段)
は、無効と規定している。

二つの大阪高裁判決

 更新料規定について、大阪高裁平成21・8・27判決は10条に違反し無効とし、大阪高裁平成21・10・29判決は10条に違反せず有効とする判断を示し、大きく対立している。両判決とも、更新料の約定が前段要件に該当することは認めるが、後段要件の該当性についての判断が食い違っている。
 8月判決が、消費者契約法の目的規定(同法1条)に照らし、「あくまでも消費者契約法の見地から、信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきである」とし、更新料規定を無効とした。
 他方、10月判決は、消費者と事業者との間にある情報、交渉力の格差を背景にして、「本来は法的に保護されるべき消費者の利益を信義則に反する程度にまで侵害し、事業者と消費者の利益状況に合理性のない不均衡を生じさせるような不当条項」とまで言えるかという観点から、そこまで不当なものではないとして、更新料規定を有効と解した。

最高裁は更新料を肯定

 平成23年7月15日付最高裁第2小法廷判決は、更新料規定を原則として消費者契約法10条に違反しないとし、その有効性を認めた。
 同判決はまず
消費者契約法10条は消費者契約の条項を無効とする要件として,当該条項が,民法等の法律の公の秩序に関しない規定,すなわち任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであることを定めるところ,ここにいう任意規定には,明文の規定のみならず,一般的な法理等も含まれると解するのが相当である。そして,賃貸借契約は,賃貸人が物件を賃借人に使用させることを約し,賃借人がこれに対して賃料を支払うことを約することによって効力を生ずる(民法601条)のであるから,更新料条項は,一般的には賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において,任意規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるというべきである。」
として、更新料規定が消契法10条前段の要件に該当することを認めた。ここは、従来争いの無かったところである。
 ついで、争点となっている消費者契約法10条後段の規定を引用。
「当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである。」と前記大阪高裁7月判決と同様に判示した。
 こうなるとあとは更新料有効に判断は傾く。判決は続ける。
「更新料条項についてみると,更新料が,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは,前記(1)に説示したとおりであり,更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。」
「また,一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であること」
「従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。」
と、更新料を有効とする理由を述べた。
 あとは結論。「そうすると,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。」
として更新料規定が、特に高額すぎたり、更新期間が短きに過ぎ頻繁に更新料を取られる等の事情が無い限り更新料規定を有効とした。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81506&hanreiKbn=02

動産担保融資、日銀、低利融資制度で支援

日銀の新低利融資制度

 日銀が6月13日から14日にかけて開いた金融政策決定会合では、昨秋始めた成長基盤支援の貸し出し制度の一環として、動産担保融資や投資を促進するため総額5000億円の新たな低利融資制度を打ち出した。
 日本の金融機関は、不動産担保に偏重し、売掛金や在庫商品等しか持たない企業には十分な融資が行なってこなかった。
今回の日銀の低利融資制度が、ベンチャー企業が育つような金融風土を作っていくきっかけとなることが期待される。

米国では動産担融資市場規模が44兆円

 西村清彦副総裁は昨年12月の講演で、日本の金融機関に目利きのバンカーが減っていると指摘し、打開策として動産担保融資の普及を提唱した。副総裁は、米国の動産担保市場規模44兆円に対して日本は2008年度で4400億円にとどまっているとし、中小企業が保有する売掛債権が60兆円を超え、在庫商品が40兆円以上に達していることを考慮すると、動産担保融資が拡大するポテンシャルは大きいと強調した。

銀行に期待される役割

 銀行は社会の公器である。本当に必要なところに、お金が回るようにし、そのことで経済が発展するようにする。そのために銀行はある。ところが、銀行は不動産を多く抱えている企業には融資するが、世界的な技術やビジネスモデルを持っている企業には、不動産がないという理由で融資していない。はっきり言って手抜きなのである。仮に融資が焦げ付いても、担保となる不動産をとったからと言えば、融資担当者の経歴に傷は付かない。そうした保身的理由から、動産担保融資は育ってこなかった。
 日銀は旗を振っても、銀行が踊らなければ、舞台は回らない。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-21698620110614