共和党の抵抗で財政の崖の危険高まる

米下院は30日夜、医療保険改革法(オバマケア)の変更を盛り込んだ暫定予算案を228対201の賛成多数で可決、上院に送付した。上院が否決するのはほぼ確実で、政府機関閉鎖の可能性が一段と高まった。
またまた財政の崖の問題である。米議会は上院を民主党が、下院を共和党が多数を占めるねじれ状態にある。下院はオバマが絶対飲めない、オバマケアの変更を予算案に盛り込むことで、喧嘩を売った形だ。共和党福音主義者、富裕層、ネオコンリバタリアン自由主義絶対信奉者)と、一枚岩ではないが、こと福祉に大金を使うことにはこの4グループ全てが反対の立場だ。
経済の不透明さを増し、ドルが不安定になり、円が買われる展開となってくるのだろうか。
このニュースで米国金融界が騒いでいるかというと、今のところ、「市場は短期的にはある程度動くかもしれないが、ワシントンの馬鹿騒ぎには次第に免疫ができてきた」「過去に政府絡みで短期的に相場が下落した局面は、常に買い時となった。今回も、過去最高値より下がった水準で買う好機が訪れた」といった楽観論が支配的らしい。
しかし悲観派もいる。ウェルズ・ファーゴ・プライベート・バンク(米国のメガバンクウェルズ・ファーゴプライベートバンク部門か)の最高投資責任者は、顧客に対し、政府機関閉鎖の機会をとらえて今年大幅に上昇した米株を売り、米国債新興国市場株など出遅れた資産に資金を移すよう推奨している。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE99003420131001
日本の憲法だと、予算について衆議院参議院とで結論が異なった場合、衆議院の議決を優先することになっているため、このような問題は起きないのだが、米国憲法にはそういった規定がないため、こういった問題が起こりうる。
もっとも、今までは共和党も大人の対応をしてきたため、こう毎年、毎年、予算がなくなって政府機関がストップするなんてことはなかった。来年は中間選挙があるからという理由もあるが、それ以上に議員層の大きな変化が原因だろう。今、米下院には、リバタリアン(TEA PARTY)が増えていて、「政府を小さくしろ、アメリカは努力する人には報いる社会、貧乏なのは自業自得、怠け者を甘やかすような福祉は不要。」ということを信念に凝り固まって言うために、共和党幹部も彼らをコントロールできないでいる。
TEA PARTYの語源はボストン茶会事件にひっかけてということもあるが、もう一つはTEA=tax enough already(税金はすでに十分)でもある。彼らは、政府機関が一部ストップしても、「それでもおれたちの生活に大きな影響はない。元々無駄な組織だということが分かるから、かえっていいことじゃないか。」程度にしか考えていない。
今後さらに問題なのは債務上限問題。こちらのほうがより厄介だが、今のところ、民主党も保守党も、チキンレースを降りる気配はない。